東京都の合計特殊出生率が0.99となった。東京で子育てをするハードルは高まるばかりだ。経営コンサルタントの鈴木貴博さんは「『東京において経済的な事情で子どもをあきらめない方法』を相談されたらどう答えるかを考えてみた。6つの戦略が提案できる」という――。
東京のパノラマビュー
写真=iStock.com/Moarave
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「子供は贅沢品」に反論できない現状

東京都の合計特殊出生率が0.99と1を割り込みました。このニュースを聞いて思い出した言葉があります。TBSのNEWS DIGの報道に登場した若者が普通に、「子供は“贅沢品”だと思ってます」というコメントをしていたのです(※)

残念なことに、私もこのコメントに共感しました。今年3月には東京23区の新築マンションの平均価格が1億2476万円になりました。普通の生活をしている普通の人に手が届く価格ではありません。インフレの中、実質賃金は下がり続けています。豊かではない世帯にとって東京は住みにくい街です。

そういった経済の実態を知っている立場だからこそ、

「子供は“嗜好品”だと思っています。“贅沢品”だと思ってます。……(中略)……余裕がある人が良い車に乗ったりとか、良い家に住んでいるとか、そういうものの一つに『なっちゃったな』と思います」(※)

そう言われると、まったく反論することはできません。

※TBS NEWS DIG「『子供は“嗜好品”“贅沢品”だと』“異次元”の少子化対策の陰で…結婚・子どもを諦め始めた若者たち【報道特集】」2023年4月1日

ちなみにこれは神奈川県在住の方のコメントですが、この記事ではさらに物価が高い東京23区に舞台を置き換えて、子ども問題を考えてみたいと思います。

東京23区には16もの「消滅可能性自治体」がある

さて、人口戦略会議によれば人口推計に基づいた消滅可能性自治体が全国に744あるのですが、そのうちの16は東京23区にあります。それは新宿区や渋谷区、豊島区などで、ブラックホール型自治体と呼ばれています。その意味するところは、外部からの人口を吸い込むだけで、その転入スピードが落ちれば人口は消滅の方向に向かうというものです。

仕事はあり、文化も発展していて、楽しい街だけれども、そこに住むコストが高い。今はそれでも人は流入してくるけれども、中では子どもはあまり生まれない。なぜなら贅沢品だから。この状況はもはや絶望の街です。

さて、少子化対策の検討は過去30年続けてきた歴史がある国に任せるとして、戦略コンサルタントの私はこの問題について、視点を逆にして検討してみたいと思います。

仮に誰かの依頼で「それでも東京23区に住みながら、子どもが欲しいのだけど、どうしたらいいか?」と頼まれた場合に、どのような「子ども戦略」を考えることができるでしょうか? 一緒に考えてみましょう。