左派とは異なる意見を述べるだけで「極右」扱い
ナイフは接近戦の武器としてはピストルよりも効果的で、やり方さえ知っていれば一突きで人を殺せるという。中東やアフリカの男性たちは、ドイツ人や日本人とは違って、自衛の本能が発達しており、必ずと言っていいほどナイフを持っているから、最近のドイツでは、ウエスト・サイド・ストーリーのような危ない光景が、しばしば繰り広げられているわけだ。
そのため、今ではパトロールの警官は、首に通称ナイフ・ショールと呼ばれる防御帯を巻いており、暑い夏にはかなりの負担だという。一般の国民がまったく知らなかったことだ。しかし、犯人Aはおそらく知っていたのだろう、彼は、警官Lの首筋の、ちょうどナイフ・ショールの切れ目のところを、見事に突き刺していたという。
ドイツ政府のイスラム擁護はメルケル時代からのことだが、当時はまだ、それに反対する意見も述べられる雰囲気は残っていた。しかし、現左翼政権ではそれがなくなり、批判してよい対象は「極右」のみ。しかも、左派の考えとは異なる人全員が「極右」とされる傾向が強くなった。最近では、司法までその影響下にあるという危険な状況だ。
5月18日、旧東独のテューリンゲン州の地方裁判所で、AfDの州支部長ビョルン・ヘッケ氏に判決が下った。罪は、彼が21年にある政治集会のスピーチで、ナチの使ったフレーズを使ったというものだった。
替え歌でふざけただけで解雇、停学処分に
何と言ったかというと、「私は心から言いたい、すべてわれわれの故郷のために、すべてわれわれのザクセン=アンハルト州のために、すべてドイツのために("Im Brustton der Überzeugung sage ich: Ja, alles fur unsere Heimat, alles für Sachsen-Anhalt, alles für Deutschland")」で、最後の「すべてドイツのために」という文章が、かつてナチの突撃隊(SA)が使ったため禁止されているフレーズだそうだ。
3年後の今、氏は有罪となり、1万3000ユーロの罰金刑を言い渡された。氏はナチとして、すでに長らく憲法擁護庁から監視されているが、テューリンゲン州では支持者が減らないどころか、いまだに一番多いため、左翼政権としてはどうにか息の根を止めたいところだろう。
もう一つ、5月23日には、北海のリゾート地のズィルト島で、酔っ払った若者が大勢で、「外国人は出て行け」という替え歌でふざけている数秒の映像が、ネットで拡散された。そして、それを公共放送などが大仰に取り上げ、ショルツ首相、フェーザー内相ほか、さまざまな政治家が、外国人差別、反民主主義などの批判声明を出すに至った。
そのため、はっきり顔の写っていた数人がまもなく特定され、あっという間に解雇されたり、大学を停学になったりした。この替え歌が良いものだとは思わないが、しかし、バカンスで酔っ払って悪ふざけの替え歌を歌ったことは、若者たちから未来を奪うほどの大罪だったのだろうか。