オーストラリアでは刑事裁判になった

フォレスト氏は業を煮やし、2022年にメタ社を刑事告訴している。「オーストラリアの反マネーロンダリング法に抵触する違法広告が自社のプラットフォームにあふれていることを知りながら、メタ社はそれを放置して巨額の収益を得ている」というのがフォレスト氏の主張だ。

だがメタ社は罪状を否認。西オーストラリア州地方裁判所は去る4月に、証拠不十分として退けている。

刑事裁判では要求される証拠のレベルが高いことが災いした格好だ。

フォレスト氏はこれで諦めたわけではなく、2022年にメタ本社のある米カリフォルニア州で民事訴訟を起こした。

この裁判では、「広告主が直接自社の広告を簡単に作成できるメタ社のセルフサーブ広告が、詐欺師たちの仕事を顕著にやりやすくした」と訴えている。

一方、メタ社は、裁判所がこの訴えを棄却するよう求めている。

刑事責任の証明はハードルが高い

米カリフォルニア州はメタ社のお膝元であり、フォレスト氏が勝訴できるかどうかは不透明だろう。

ただ、カリフォルニア州の住民も、メタ社には不満をつのらせているようだ。

カリフォルニア州在住の消費者がメタ社に対して集団民事訴訟を起こしている。「同社は積極的に詐欺広告をプラットフォーム上に勧誘し、詐欺師たちを奨励・幇助ほうじょしている」と訴えているのだ。

カリフォルニア州連邦地裁は2022年、「メタ社が詐欺広告の流通に積極的に関与した証拠がない」として、原告側に敗訴を言い渡している。

このように、メタ社は目下、世界中で訴えられているが、同社の民事・刑事責任を証明することはハードルが高い模様だ。

仮に裁判を通じてメタ社から「詐欺広告の対策を実施する」との約束を引き出したとしても、メタ社の対策の内容は詳細不明で、しかも効果がない。メタ社に実効性のある対策を求めるのがいかに困難かがわかる。

自分のレーンだけがハードルが高い不公平な陸上競技場のイメージ
写真=iStock.com/komta
刑事責任の証明はハードルが高い(※写真はイメージです)