前澤氏の主張が認められない可能性

前澤氏の訴訟はどうなるだろうか。あくまで筆者の予想ではあるが、海外での訴訟を見る限り、「1円の損害賠償」は可能性があるだろうが、メタ社が詐欺広告を放置していることについて「彼らの行為が違法なのか合法なのかまずははっきりさせたい」という点については、前澤氏が訴状で主張する「メタ社の不法行為」の主張が認められないかもしれない。

自民党の合同勉強会に出席する前澤友作氏、2024年4月10日
写真=時事通信フォト
前澤氏の主張が認められない可能性がある(自民党の合同勉強会に出席する前澤友作氏、2024年4月10日)

メタ社は「対策はしているが、現在の技術では詐欺広告のすべてを捕捉できない」と反論することが予想される。

また、この主張が虚偽だと証明する証拠を原告側が用意するのは困難である。一方、日本政府は6月にまとめる予定の「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」で、メタ社などプラットフォーム事業者に広告審査基準の公表や、詐欺に使われたアカウントの迅速な削除などを要請する対策を盛り込むと、朝日新聞が報じた。しかし、これはあくまでも「お願い」に過ぎず、運用はメタ社次第であるため、あまり効果はないことが予想される。なぜなら問題の核心は、メタ社のビジネスモデルそのものである「ターゲット広告」にあるからだ。

根本原因は「メタ社の広告ビジネスの仕組み」にある

詐欺広告が蔓延している根本原因が、メタ社の広告ビジネスの「エコシステム」、すなわちユーザーの関心に沿って広告が表示される仕組みにあるのは間違いない。

メタ社は広範な個人データ収集を通して、ユーザーのみならず、非ユーザーの興味関心とネット上の行動まで知り尽くしている。

投資詐欺広告がよく配信されている人たちは、おそらく過去に何らかの形で投資や金儲けに興味を示したことがある。

詐欺師の側はそうした層を狙い撃ちにするノウハウを持っており、残念ながら、ワナに引っかかる人は必ず一定の割合でいるのである。