睡眠習慣が安定した今でも、展示会前の2週間など、睡眠を削って作品の制作に没頭しなければいけない時期はあります。でも、普段から健康的な生活をしていれば、いざというときに多少の無理がききます。本当に必要なときにブーストをかけたいから、普段からいい睡眠を取ってコンディションを整える。これは創作に限らず、どのようなジャンルでもプロが備えておかなければいけない心構えかもしれません。

【図表】成功を掴むためには良質な睡眠が不可欠

環境を変えると自分の実力がわかる

そもそも私が創作に興味を持ち始めたのは3歳になったくらいの頃です。家ではいつもアニメや漫画、特撮やおもちゃ、ゲームに熱中。中学生になると音楽も好きになり、海外のアーティストにハマっていました。

一人っ子で、家では一人で過ごすことが多く、何かに没頭して過ごす時間が圧倒的に長かった。そんなときに自分を元気づけてくれた存在がクリエイターであり、いつしか私も自分がつくったもので世界中の人たちに楽しんでもらいたいと思うようになりました。その思いは今も同じです。「子どもの頃の自分が今の私の作品を見たら、面白がってくれるかな」という視点が創作の軸になっています。

クリエイターのなかでもとくにイラストレーターの道を選んだのは、まぎれもなく自分が一番向き合うことができたのが、イラストだったからです。高校生の頃はサブカル音楽が好きな友達とバンドを組んでライブもやっていました。でも演奏するより、バンドのアーティスト写真やバンドTシャツ、ライブの告知ポスターを作るほうが楽しかった。バンドメンバーから「そういうのばっかりやって、全然楽器の練習しないね」と言われて、やっぱり自分は絵を描いたりデザインを作ったりすることが向いていると痛感。

好きなことがたくさんあって、やってみたいとは思っていても、実際に行動に移してやっていることが、自分に本当に向いているものだと思います。

高校生活を送っていて、ふと自分は今後どうしていこうと考えることがありました。まず浮かんだのは美大への進学でしたが、自分が美大に行く意味を当時感じていませんでした。そんなあるとき、ブラジルに引っ越す親戚から「よかったら遊びに来ない?」と誘われました。もともとブラジルの音楽や『シティ・オブ・ゴッド』というブラジル映画が好きだったこともあって、後先考えずにブラジルに渡りました。自分の将来がどうこうというより、面白そうだから、というのが本音です。

結果的に、ブラジルに渡ったことは自分の人生にとってかけがえのない経験になりました。日本にいたときは頑張らなくてもなんとかなる場面が多かったです。自分は頑張っているつもりでも、今思うとぼんやり過ごしていました。しかし、ブラジルだとそうはいきません。渡航費こそ親に出してもらいましたが、生活費は自腹。日本にいたときと同じように怠惰に生活すると、すぐにお金がなくなっていきます。

ブラジル社会で周囲を見渡すと、昼間は一生懸命会社で働き、夜はより高度な教育を受けるため、また給料の高い職業に就くために夜間大学へ通っている人が多くいました。みんな自分で未来を切り拓こうとしていました。一方で、私はうまくいかないことがあると環境や誰かのせいにして努力してこなかった。ブラジルに来て自分のぬるい部分を精神面でも金銭面でも全身につきつけられて、挫折感を覚えました。

このままノリで生きながら「自分は何者かになれる」と信じても、イラストはうまくならないし、人生も良くならない。やるなら全身全霊でやらないとダメだと気づいて、早起きしてイラストを描いては投稿する生活に切り替えました。日本にいるときは「自分はイラストがうまい」くらいに思っていたので、ブラジルに来ていなかったら勘違いに気づく機会もなく、中途半端に終わっていたでしょうね。