日本一イタリアワインを消費するチェーン

たとえば、イタリアワインの消費量では、サイゼリヤは間違いなく日本一です。イタリアワインの輸入商社はたくさんありますが、彼らは販売しているのであって、自ら消費しているわけではありません。サイゼリヤはそうした輸入商社を通さず、直接輸入し、大半は自分たちのお店で消費しています。そして、だからこそ入手できる希少なワインもありました。

社長時代、私は毎年イタリアに視察に行っていましたが、現地には定点観測している仲のいいレストランがいくつかありました。そこに行くとき、希少性の高いイタリアワインを手土産に持っていくと、とても喜ばれました。限られた量しか生産されていないので、地元の彼らでも入手が困難だからです。

それはまとまった量を買うバイイングパワーの問題というよりも、ワイン生産者との個人的なつながりの問題だったりするのが、おもしろいところです。

イタリアワインはカジュアルに楽しむもの

役員の一人は根っからのワイン好きで、「値切れないバイヤー」として知られていました。値切れないから、全部相手の言い値で買ってくるわけです。でも、その値段は決して高くない。ジュゼッペ・リナルディという伝説のワイン造りの名手のおじいさんがいるのですが、ジュゼッペさんはバイヤーの彼をアミーゴと呼んでかわいがっていました。だから、名手の造る希少ワインを買えるのです。そういう濃いつながりの生産者が何人かいました。

グラスにワインを注ぐ様子
写真=iStock.com/kuppa_rock
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バイヤーの彼は、自分が飲みたいワインを相手の言い値で買ってきます。ワインをやたらに高級品扱いするのを嫌っていたから、利益は考えていません。

日本人は高いものほどありがたがって飲むけれど、それはフランスワインの話なのです。フランスやカリフォルニアのワインは「売るためのワイン」だから、高い。でも、イタリアワインは「日常的に飲むワイン」で、地元の人はワインの酒蔵に瓶を持っていって、ワインを分けてもらう。それくらいカジュアルに楽しむのが、イタリアワインの本来の姿なのです。