100円とは思えないほど手間がかかっている

サイゼリヤのグラスワインは、税込み100円という値段から、粗悪品と揶揄されることもあるのですが、実は、フレッシュなイタリアワインを遠く離れた日本の地で味わってもらうために、すごくいい状態で運ばれてきていることは、意外と知られていないかもしれません。

ヨーロッパから日本に船で来るときは、必ず熱帯を通過します。そのとき温度が上がると、味が変わってしまうので、一定以下の温度に保つリーファーコンテナ(定温コンテナ)で、必ず船倉に入れて運んでもらっています。その温度を保ったまま、店まで運んでいる。そこまで手間のかかるワインを100円で提供しているのです。

そういう地味なことをコツコツ積み上げていると、わかる人にはわかってもらえるようです。バズレシピでおなじみの料理研究家リュウジさんが、YouTubeで取り上げてくれた動画「【泥酔】日本一サイゼリヤを愛している料理研究家が提唱する本当のサイゼリヤの楽しみ方【前編】4」もバズりました。

サイゼリヤには、扱っているワインの種類が通常店舗よりも多い「スペシャルワイン店」もあって、そこで「この値段でこのワインが飲めるの?」という掘り出し物に出会う楽しみもありますが、全店で扱っているテーブルワインも手を抜かない姿勢が貫かれています。

無料のオリーブオイルはどんどん消費してほしい

オリーブオイルもそうです。フレッシュなほうがおいしい。新鮮なオリーブオイルは、舌の上でピリピリします。苦いし、めちゃくちゃスパイシーなのです。

みなさんが口にしているオリーブオイルがまろやかで、マイルドな味がするとしたら、それは古いか、スペイン産の可能性が高い。サイゼリヤが提供しているのは、イタリアの認証がついたエクストラ・バージン・オリーブオイルだけです。スペイン産などの混ぜ物があると、認証を受けられません。

サイゼリヤのオリーブオイルは、お食事されるお客さまに無料で提供しているので、大量に消費します。そのため、めちゃくちゃ回転がいいわけです。オリーブオイルも、フレッシュなほうがおいしい。たくさん売れれば、それだけ回転が速くなるので、どんどん新しいものが入ってきます。

オリーブオイルは1年経つと味が変わります。年度替わりのときに、比較のために両方出すことがあるのですが、全然味が違います。ハウスワインにも年度替わりがあります。それくらい、鮮度に意味があるのです。

だから、たくさん出れば、店もうれしいし、新鮮なオイルやワインを楽しめるお客さまもうれしい。サイゼリヤの規模になると、そういうポジティブサイクルが、そこらじゅうで起きてくるのです。

そういうことは、日本で個人でイタリアンレストランをやっている人たちには知れ渡っているようです。「レストラン ラッセ」のオーナーシェフ、村山太一さんのように、「サイゼリヤのオリーブオイルがいちばんうまい」と言ってくれる人もいます(『なぜ星付きシェフの僕がサイゼリヤでバイトするのか?』飛鳥新社)。