悪質クレーマーは「貧乏神」や「疫病神」

ちなみにこの「お客様は神様」というフレーズは、演歌歌手の三波春夫氏から発せられて有名になった言葉だが、これは悪質クレーマーが呪文のように唱える「金を払った客なんだから、神様扱いしろ」といった意味では断じてない。

氏は生前インタビューでこのフレーズについて問われた際、「歌う時に私は、あたかも神前に祈るように、雑念を払って澄み切った心になる」「演者として、お客様を神様と捉えて歓ばせることが絶対条件なのだ」と答えている(※)。この場合の「お客様」はあくまで聴衆のことであり、カスタマーやクライアントを指しているわけではないのだ。

「神」を自称し、サービスの要求水準ばかり厳しく、暴言や恫喝で相手を無理矢理動かそうとするような者は、神は神でもせいぜい「貧乏神」か「疫病神」といったところであろう。

※三波春夫オフィシャルサイト 「お客様は神様です」について

カスハラが該当し得る7つの刑法犯

建設的な「クレーム」であれば、顧客は商品やサービスに対する不満点や改善点を指摘したとしても、問題が解決されれば納得し、以前以上に熱心なファンとなることもあり得る。

一方で「悪質クレーム」や「カスハラ」となると、たとえクレーム内容が妥当であっても、対応してくれる店員に対して暴言を吐いたり、脅迫したり、過剰な不当要求がなされたりするなど、限度を超えた行動が伴うことが多い。さらには商品やサービスに不備がなくとも、顧客個人の感情が暴走したり、歪んだ正義感が行動に繋がってしまったりすることもある。以下のような行為は程度によっては、刑法犯に該当し得るのだ。

・店員が「お引き取りください」と要求しても帰らなければ「不退去罪(刑法130条)」
・店内で、店員の制止に従わず、大声を出し続けると「威力業務妨害(刑法234条)」
・ネット上に評判を貶めるような嘘の書き込みをしたり、無言電話をかけ続けるなどして営業を妨害すると「偽計業務妨害罪(刑法233条)」
・ネット上などで「店員の●●という人の態度が最悪! 皆も利用しないように!」と言いふらすと(それが事実だとしても)「名誉毀損罪(刑法230条)」
・「俺を怒らせたら何するか分からないぞ!」「お前ん家に、後で若い衆をよこすからな!」などと言って脅すと「脅迫罪(刑法222条)」
・店員に無理矢理土下座させたり、謝罪文を書かせたりした場合は、「強要罪(刑法223条)」
・「ネットに書き込むぞ! 黙っててほしいならそれなりの誠意を見せろ!」などと過剰な見返りや金品を要求すると「恐喝罪(刑法249条)」