企業がカスハラを放置してはいけない理由
従業員にとっては、迷惑客による高圧的で理不尽な要求、迷惑行為、犯罪行為等への対応を強いられることはプレッシャーでしかなく、何をされるか分からない恐怖心と精神的な疲弊も加わり、大きなストレス要因となることは間違いない。ネガティブな影響を被るのは従業員個人だけに留まらず、他の利用客、職場環境、企業運営など広範に及んでしまうのだ。たとえば、次のような要素が挙げられる。
〈他の利用客への影響〉
・迷惑行為や暴言などによる店舗利用環境、雰囲気の悪化
・カスハラ対応に人員リソースを割かれることによる、他利用客へのサービス提供遅延
〈従業員や職場環境への影響〉
・過度なストレスに晒されたことによる体調不良、メンタル不調の発症
・業務対応への恐怖感、配置転換や人事異動の必要性
・休職や退職者の発生
・カスハラ行為を目の当たりにすることによる職場環境悪化
・カスハラ対応に人員リソースを割かれることによる、通常業務への支障
〈企業運営への影響〉
・カスハラ対応そのものに加え、再発防止のための取り組みやマニュアル整備、研修実施、弁護士相談など諸々の対応により企業リソースを割かれる
・従業員の業務対応忌避や休職、離職等による補充人員確保の必要性と追加コスト発生
・代替商品/サービス提供や割引提供、解決金支払などに伴う金銭的損失
・カスハラ被害にまつわる情報拡散に伴う風評被害、ブランドイメージ低下
・人員が定着せず、新規採用にも悪影響
・安全配慮義務違反など、法律にも抵触するリスク
(労働契約法5条「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体などの安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」)
このように、カスハラ行為に対して企業側として何の手立ても講じないままだと、物理的にも心証的にも大きな損失を被ることになってしまう。ただでさえ人手不足が叫ばれる現在においては致命的であり、カスハラ対策は喫緊の課題といえよう。