「墓じまいを前にして親族を集めたら、若い世代の孫だけが反対」
民間葬送サービス会社のハウスボートクラブは2003年、「墓じまいに関する調査(20歳以上、有効回答数871)」を実施した。「墓じまいの検討をしたことがあるか」との問いに対し、全体の48%が「墓じまいを検討している、または過去に検討していた」との回答だった。
墓じまいを検討している理由として、「子どもに迷惑・負担をかけたくないから」が最多(27%)で、墓がなくなることについては「負担が減って楽になる」(28%)「気にならない」(23%)などとしていた。
また、冠婚葬祭研究所が2022年に実施した「葬祭等に関する意識調査(40〜89歳、N=2500)」でも、「お墓に入る意向」のある割合は49%と、半数を割っていた。
つまり、祖父母・両親世代と子ども世代とでは、墓に関する考えにおいて、大きな齟齬を生じさせているのだ。先述のように、「墓じまい」の風潮が広がっているのは事実である。祭祀継承者である祖父母や両親の中には、自身の老後資産や孫・子ども世代のことを考えて「墓の維持にはコストと労力がかかる。自分の責任で墓じまいするのが賢明」と判断している人が少なくない。
他方で、子ども・孫世代の本音は、「おじいちゃんやお父さんは墓じまいをしたがっているが、私は墓じまいはイヤだ」ということなのかもしれない。ある関西地方の僧侶が、こう言っていた。「墓じまいを前にして親族を集めたら、孫だけが反対し、墓じまいの話が流れたことがあった」
ややもすれば、親と、子どもの死生観は相反するもの。ひとたび墓じまいしてしまうと、取り返しのつかないことになりかねない。墓の管理や維持のことは、法事などの際に親族内でよく話し合っておくことが肝要だろう。
参考までに、「あなたや、あなたの親の葬儀はどの宗教で行うか」の設問結果についても、明らかにしておこう。「仏式」が75%、「神道式」が7%、「キリスト教式」が2%、「その他の宗教」が2%、「無宗教式(友人葬・お別れの会など)」が2%となった。依然として、葬儀は仏式の割合が多い。お宮参りや受験の合格祈願は神社で、クリスマスや結婚式はキリスト教の教会でやるが、人生の最期の局面では仏教に委ねるというのが日本人の宗教行動なのだろう。