人脈構築、情報収集、対外発信いずれの面でも力不足
世界各国での対応を振り返ってみても、例えばサンフランシスコでは、慰安婦像が急遽公有地に建てられることが発覚し、総領事が任国の市長に対して申し入れをしようとしても日頃の関係構築ができていなかったためにアポさえ取れず、本省政務レベルの不興を買ったと伝えられている。
また、米国ニューヨークの教科書会社が慰安婦問題について一方的な記載をしたため、抗議すべく総領事館員が押っ取り刀で申し入れたところ、「言論の自由」に対する容喙と受け止められ猛反発を買い、逆効果になった例もあったと聞かされた。
到底洗練されているとは言えない、こうした不手際が後を絶たない。
まさに、人脈構築、情報収集、対外発信いずれの面でもプロフェッショナルな匠のレベルに達していない状態にあるからこそ、いざという肝心な時に、慰安婦問題のような重大な懸案について国益に沿った方向で事態を動かしていくことができないのである。これこそ、劣化である。
「癒やし事業」に日本政府から10億円拠出
1965年(日韓請求権・経済協力協定)、1993年(河野談話)、1995年(アジア女性基金設立)と並んで記憶しておくべき年は2015年だろう。再び問題が蒸し返され、それに付き合った外務省、日本政府はまたしても謝罪を行い、そして新たな出費を行うこととなったからだ。
既に韓国人の元慰安婦61名に対しては、日本の総理大臣の謝罪の手紙とともに一人当たり200万円の「償い金」がアジア女性基金から届けられてきた。加えて、一人当たり300万円に上る「医療・福祉支援事業」(住宅改善、介護サービス、医療・医薬品補助等)が政府拠出金を原資として実施されてきたのだ。
そのうえで、2015年の日韓合意により、今度は、慰安婦であった女性の心の傷を癒やすための「癒やし事業」に10億円が日本政府から拠出されることとなった。