スマホの使用も「脳の発達」に合わせる

――小学校に入って以降はどうでしょう?

小学校に入って以降は、今は学校でも子供1人にタブレット1台という時代ですから、電子媒体なしで過ごすというのは難しいとは思います。それでも小学校低学年までは、まだまだ自分で自分をコントロールすることはできませんので、個人でスマホを持たせることは推奨しません。

持たせるとしたら、位置情報の確認とか緊急連絡のためだけに、キッズスマホを持たせる。共働きの親の場合は特に、子供がどこにいるか確認できないと困る場面はありますし、何かあった時に子供が緊急連絡できるツールを持たせるのは、現代の社会状況を考えると必要なのかなと思います。ただ、いろんな情報にアクセスできるような権限は一切与える必要もないし、与えてはいけない。

小学校高学年になれば、少しは許容範囲を広げてもいいでしょう。タブレットの使い方とかメディアリテラシーについては学校の授業で習ってきますし、必要ならスマホを持たせても構わないとは思います。とは言うものの、やっぱりまだ自分で自分を抑制するのは難しいので、小学校4年生ぐらいまではアプリの制限や使用時間の制限は親主導でやっても構わないと思います。

ただ、その子にもよりますが、4~5年生以降の年齢になってくると「こころの脳」つまり前頭葉が育ってきます。そこで親は、子供を信頼しながら、少しずつ自力でメディアとの接触をコントロールできるように導いていかなければなりません。

「今まではスマホを使える時間を親が制限していたけれど、調べものをするのに必要な時間は使ってもいいと思うよ」と子供に話しましょう。そして、1日何時間とか、何時から何時までは使える時間にするというルールを、親子でじっくり話し合って決めるのです。

それでも、決まった時間を過ぎてもスマホをいじっていたりとか、もっとインターネットに繋げて使いたいと言いだしたりとか、調べ物ではなくゲームばかりしていたりといったことが必ず起こります。そうしたら「調べ物をするためだけにスマホを使うという約束だったけど、ゲームばっかりやってるね。自分でなかなかゲームがやめられないんだったら、やっぱり時間を制限した方がいいと思うよ」と子供に伝えて、親子でまた話し合いをしましょう。トライアンドエラーを繰り返す中で、子供が自分で考えていけるよう促すのです。

スマホを使用する子供と心配する母親
写真=iStock.com/Hakase_
※写真はイメージです

ただしここで言っているのは「寝る時刻と起きる時刻だけは絶対に守る」と言うルールを家庭で徹底することを前提とした、それを守った上でのメディアとの接触時間です。就寝時刻を超えた設定は基本的にありえません。

主体性を尊重することで「こころの脳」は育つ

――なかなか根気が要りそうですね。トライアンドエラーを繰り返す中で、親が気を付けるべきことはありますか?

小学校高学年であれば、頭ごなしに「こうしちゃダメ」、「こうしなさい」と言うのはやめておきましょう。

まず自分で考えさせて「睡眠の質が落ちているのはスマホから出てくる光、ブルーライトのせいだよね」と納得させましょう。今、学校ではメディアリテラシーの授業をかなりやっているので、普通はそういうことを知らないはずはないんです。

「そういうの学校で習ったよね」と聞けば、「うん、知ってるよ」と答えるでしょうから、本人の知っていることを引き出しながら、「実際にお母さんが見てると、あんたは寝付きも悪いみたいだし、夜中も目が覚めてしまうみたいだし、やっぱり寝る時間ギリギリまでスマホ見てるのがよくない気がするんだよね」って、あくまで「お母さんの感想はこうだけれど、どうする?」というスタンスで、子供が主体となって、自分でメディアコントロールをするよう促すんです。

絶対に子供は失敗します。でも失敗も承知の上で、トライアンドエラーの中から子供が自力で学んでいく状況を作っていくことで、「こころの脳」も育っていきます。