「頼まれたら、断らない」VS「基準に合わなければ断る」

いわゆる「いい人」って、何かを頼まれると、助けの手を差し伸べてしまいがちですよね。マクロな引いた目で見れば最高の心掛けですし、人類そうあるべきだと思います。

しかしながらミクロな視点、プライベートやビジネスにおいては、頼みごとを断らないのがベストじゃないケースもありますよね。

「二つ返事で仕事を引き受けたら、終わらず、土日徹夜することになり、せっかく楽しみにしていた子供の運動会に行けない」。そんな負のスパイラルが始まる。わかってはいるのだけど、ついそんな状況に陥ってしまいます。

なぜ自分が損をする状況に、自分を追い込んでしまうのか。理由はシンプルです。その状況に直面する、今回で言えば頼みごとをされたときに、初めて自分の行動について考え始めるから。自分にお願いをしてくる輩に、いい人と見られたい、困っていてかわいそうなどの感情が湧いてきて、判断が鈍るのです。

日々の行動はこう変えてしまいましょう。「先に判断基準をつくる」。

「この人に頼まれたら、受ける。この人以外の頼みなら、受けない」や、「土日に予定がない場合だけは、2回に1回は受ける」といったように、自分の中で判断基準を先に立てて、基準に合わせて行動すればいいのです。

頼みごとをされたときにいい人になるか、ならないか。精神論にせず、ルール化してしまうのがいいでしょう。

人生の話でいえば、婚活も一緒。事前に判断基準を持っていないのが、結婚したいと言いながら結婚できない人の典型的なパターン。合コンなどで異性に会ってから判断をする。目の前の人を比較して判断基準をつくっていくから、様々な条件に振り回される。結果、高望みになってうまくいかない。

最初から自分の婚活市場の価値を見極め、「相手がこういう基準を満たしていたら、積極的に行動する。そうじゃない場合は断る」と事前に決めておけば、まずうまくいく。いつまでも「白馬の王子様」を待たずに済みます。

ちなみに、頼みごとを引き受けるかの返事を保留したり、いったん持ち帰ったりするのは最悪です。

クライアントから、一見役に立つかわからない事例を調査してほしいと依頼されたとしましょう。もしあなたが依頼を宿題として持ち帰ったとしたら、「筋が悪いのでやりませんでした」というのは許されません。そして、「調査しましたが、意思決定の材料には役立ちそうなネタはありませんでした」というのもご法度です。仕事は自分を売り込む場なのに、これではそっぽを向かれてしまいます。

イエスマンでよかったのは遠い昔。今は甘えられません。この宿題には意味があるのか、どうすれば意味がある仕事にできるのか。その場で考えて、その場で議論し、仕事に意味が出せないなら断れる。現代は、そんなリジェクトマンこそ重宝される時代です。

判断が遅い! 言われる前に考える

「相手に予算を聞く」VS「先に見積もりを出す」

たとえば、僕が講演を頼まれたとします。そのとき、「謝礼はいくらですか?」と聞いてから行動してしまうのはアウト! 一度相手に聞いてしまえば、やっぱり「いい人」に思われたいし、お金にがめついとも思われたくないから、思ったより安い金額でも受けてしまうことになります。

でも先に、「1講演、○円です。それで予算がOKならやらせてください」と言ってしまえば、自分の判断基準で仕事を決められます。

もちろん、怖いです。「じゃあ、いいです」と言われて、仕事をもらえなくなるのは。でも、相手の頼みを断るのは排他。自分の基準で断れば、次に決めた金額を払ってくれる人が現れたとき120%で仕事と向き合えます。

人生を健やかにするためにも、いい人ブらないのはホントに大事なんです。

自分の基準で断れば、本気で仕事ができる

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年5月31日号)の一部を再編集したものです。

(撮影=宇佐美雅浩)
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