例えば、千葉県八街市の空き地だ。この周辺は数年前まで草が生い茂る未利用地だった。しかし、現在は車両置き場になっている。不動産仲介サイトによると、この空き地は約40坪(131平米)、建築不可の物件となっている。価格は200万円。周囲にもタダ同然の土地があるのに、わざわざこの土地を200万円で買う人はいるのだろうか。
そこまで不運なケースを想定しなくても、周囲もすべて空き地で日当たりに恵まれた売地がたくさんある中、わざわざ隣に家屋が近接して圧迫感のある土地を選ぶ人がいるだろうか。繰り返すが、買い手にしてみれば選択肢は他にいくらでもあり、わざわざ好き好んで悪条件の土地に手を出す理由がないのだ。細切れにされた分譲地は、特にそのリスクが高い性質を備え持っている。
所有しているだけでリスクになる
千葉の限界分譲地の固定資産税は、40坪程度の土地であれば年間1万円にも満たない程度の額であり、所有し続けたからといって生活に支障をきたすほど重い負担になるものでもない。場所によっては評価額が低すぎて非課税のこともある。そのため、無理に捨て値で手放さなくてもとりあえずそのまま持ち続ければよい、という判断をしている所有者も存在する。
だが土地の需要というものは、立地だけではなく周囲の環境によっても変動するもので、圧倒的な供給過多にある限界分譲地においては、些細な周囲の変化によっていとも簡単に市場から脱落するリスクをはらんでおり、ただ漫然と所有し続けるだけで、そのリスクをカバーできるほどの資産価値はないだろう。
限界分譲地の有り様は、トランプゲームの「ババ抜き」に似ている。「資産価値のない土地」という「ババ」を引き受けてくれる人間を見つけられなければ、リスクを手放すことはできない。だから事情を知っている人間は、どれだけ安くても、決して手を出さないのだ。