廃墟のまま放置されている住宅の所有者は、その家をどうするつもりなのか。各地の放置分譲地を取材するブロガーの吉川祐介さんは「持て余して放置しているのではないかと都合よく解釈していたのだ、実際は違った。所有者さんに直接話を伺うと、売る気がない人が多く、放置することへの危機感もなかった」という――。
別荘が1軒も建っていない「別荘用分譲地」
筆者は主に千葉県北東部の「限界分譲地」をはじめ、関東各地の古い別荘地の取材を続けている。今年(2023年)は、筆者が暮らす九十九里平野・千葉県横芝光町の自宅から、およそ車で15分程度の範囲内に点在する空き家や空き別荘の登記事項証明書を取得し、その所有者さん数名に連絡を取る機会があった。
これは知人の家探しの手伝いという個人的な都合で始まったのだが、筆者の関心の高いテーマでもあった。空き家を売りに出す所有者の声は聞くことがあっても、売りにも出さなければ使ってもいない空き家の所有者の声は、地元の仲介業者でもなかなか聞く機会がないからだ。
九十九里平野における宅地分譲は1960年代末ごろから徐々に広がり始め、80年代~90年代初頭にピークを迎えている。ニュータウンというよりは「別荘地」の体裁で分譲されたものが多いが、名目が何であれ、購入者の多くは投機目的であった事実に変わりはない。地価は暴落し、今なお膨大な数の空き地が、一度も家屋が建てられることもなく放置されている。
同様の状態に陥っている「別荘地」は千葉県の他に栃木県の那須高原周辺などでも多く見られるが、一般の住宅地としての需要がほとんど発生しなかった別荘地では、空き地の割合は「限界ニュータウン」よりさらに高い。例えば、千葉県横芝光町屋形の別荘地名目で販売された分譲地のように、ついに1戸の家屋が建つこともなかった「放棄分譲地」も多数存在する。