千葉県の郊外には宅地造成されたまま手つかずになっている「限界分譲地」が多く存在している。こうした土地にはほとんど需要はないが、それなのに広告宣伝は行われている。ブロガーの吉川祐介さんは「土地を売るには草刈りなどの管理が必要になる。このため不動産仲介業者は所有者に草刈りを勧めるのだが、仲介業者が草刈り業者を兼ねているケースが多い。土地の売買とは別の市場が成立しているために、物件価格に市場原理が働いていない」という――。

買い手が見つからない更地に「高値」がつけられる

筆者が住む千葉県には、宅地造成されたまま手つかずになっている「限界分譲地」が多く存在している。都心へ車で1時間という立地であるが、売れずに放置されている。その原因について、本稿では「不動産の仲介業者」という視点から見ていきたい。

千葉の限界分譲地、というより千葉県全体に言えることだが、地場の不動産業者がカバーしている。もともと千葉県は農業が盛んな地域であり、農家用住宅の需要もある。農村部の物件であっても分け隔てなく扱う地元の業者が何社も存在している。

これまで筆者が紹介してきた、地価が大きく下落した限界分譲地であっても例外ではない。中古住宅は地元の不動産業者が取り扱い、空き地になっている分譲地も扱う業者が皆無というわけではない。底値に近い格安物件だからこそ一定の購入希望者もいるからだ。

千葉県九十九里町作田
筆者撮影
千葉県は、人口規模の小さな農村エリアでも、中古住宅や事業用地などの取引は活発で、地場の不動産業者は県内のどこでも見られる。(千葉県九十九里町作田)

ただ、坪1万円前後の更地を積極的に扱いたがる業者は少数派だ。そうした土地の仲介を拒絶する業者も存在する。実勢価格から算出される仲介手数料の安さを考えれば、むしろ自然な反応であろう。

こうした状況の中で、千葉県内に大量に放置されている限界分譲地では、奇妙な現象が起きている。およそ実勢相場とはかけ離れた、誰も買うはずもないような高値の価格の売地広告が、常に大量に出され続けている。

売り広告があふれる「限界分譲地」特有の事情

その数はあまりに膨大である。一見するとそれが地域の相場価格に思えてしまうのだが、継続的に観察していると、非現実的な価格であることがわかる。当然ながら買い手は見つからず、長期間広告が出され続けることになる。

近隣の2つの物件が、坪単価にして10倍ほどの開きがあることも珍しくない。ある分譲地では30坪の土地が300万円、近くの南東角地の好条件の土地が30万円で売り出されている例もある。統一された相場観はまったく形成されていないことがわかる。

たまに広告が消えることがある。成約したのかと思いきや、現地に赴いても何一つ変化している様子はなく、単に反響がなく広告が取り下げられていただけに過ぎなかったりする。

なぜ誰も買わない物件が高値で売り出され、広告が大量に放置されたままなのか。①売主側の理由、②不動産仲介業者の理由を考えてみたい。