後者の業者の場合、自社サイトに一応物件情報が掲載されてはいるものの、詳しい所在地も記載されていなければ、物件画像もないのでサイト上の情報だけでは検討のしようもない。現地の看板には価格などの詳細な情報もないのが普通なので、サイトの情報と照らし合わせて比較することもできない。

価格が記載された看板
筆者撮影
まれに価格が記載された看板もあるが、そもそも人目に触れる機会が多くないので、条件の良くない土地の取引は低調である。(千葉県山武市沖渡)

実際に問い合わせをしてみたら…

筆者は一度そのような不熱心な業者に売地について問い合わせたことがある。

筆者は一般の不動産会社に問い合わせる感覚で、こちらから希望条件を出し、相手側から条件に合致するいくつかの物件を紹介してもらおうと考えていたのだが、「具体的にどこの土地なのか言ってくれなければわからない」と取り付く島もない。

「このような物件を探している」といったリクエストを出しても、それじゃ答えようがない、と面倒そうにあしらわれただけで、特定の物件の所在地を明言しない限り紹介もしてくれなかった。

そうなると、複数の物件の価格を聞いて比較検討するためには、自力でその草刈り業者の管理地をいくつか特定した上で個別に聞き出さなくてはならないわけで、よほどの物好きでなければ他の購入手段を検討するだろう。この業者に仲介を依頼している売主は、こんな消極的な営業しか行わない業者に、売却の望みを託しているのだろうか。

仲介業務を行わない草刈り業者にいたっては、そもそも仲介業務に携わる資格がない以上、そこに依頼し続けても、売却につながる望みは極めて薄くなる。

いずれにせよ主力の業務が土地の売却・仲介ではない以上、例えば依頼主が非現実的な売却価格を望んだとしても、業者側に、それを強く否定し、売主をたしなめるほどの強い動機が存在しないとも言える。あるいは、変に口を挟んで依頼主の機嫌を損ねたくない、との思いが働くこともあるだろう(それは一般の仲介業者も同じだが)。

売主の言い値がつけられる

いずれにせよ千葉の限界分譲地は、その市場の構造上、売主の言い値で価格が設定される場合が多い。

言い値で売却できるのであればいいが、一向に売却につながらなくても、広告を掲載している時点ですでに完結している市場(草刈り業務)のほうが、肝心の売買市場よりも活発であるために、この倒錯した現状はなかなか改善されないままである。

結局はそのような高値の売地は一向に見向きもされることもないまま、時折登場する適正価格の物件(大体坪1万円以下である)だけが、わずかに存在する買い手の需要に応えているだけの状態が続いているのだ。

千葉県山武市麻生新田
筆者撮影
結局のところ、価格を下げなければ売れる土地も売れないため、その判断の責任は所有者にあるといえる。(千葉県山武市麻生新田)