非現実的な価格の広告が大量に出されっぱなしの市場というのは誰が見てもおかしなものだと思うが、それは別に草刈り業者が売主に強要しているものではない。

売主がどうしても不要な土地を手放したいと、捨て値の希望価格を提示すれば業者はその価格で広告を出している以上、これは一概に業者に非のある話とも言えず、やはり売主の判断が甘いために起きている事象であると言わざるをえないだろう。

泣き寝入りを強いられる所有者も

また別の要因として、近年では、土地の売却や宣伝を名目とした「手数料」の詐取も横行している。

これは無用な土地を所有し続ける所有者に対し、土地の売却・仲介を持ちかけながら、売主から、本来支払う必要もない「手数料」を巻き上げるものだ。こうした業者が千葉の限界分譲地でも暗躍していた。

不動産売買における仲介手数料は成功報酬である。売却のために行う広告宣伝費や調査費用などは、すべて上限が定められた仲介手数料に含まれており、売買契約の成立前の時点で売主から徴収することはできない。

ところが一部の業者は、登記簿に記載された住所の所有者に対し、お持ちの土地が高く売れる、責任持って管理業務を行うなどの誘い文句を散りばめたダイレクトメールを送りつけ、調査費、看板設置費用、測量費などの名目で費用が必要になると騙り、30万円ほどの手数料を徴収している。

こうした行為は宅建業法違反で、業界内でもしばしば注意喚起が行われている。だが、被害金額が、弁護士を雇って法的措置に訴えるとかえって赤字になってしまう程度であり、泣き寝入りする被害者が多い。時折摘発や処分を受けている業者はあるものの、ほぼ野放しの状態が続いている。

大阪市の業者の立看板
筆者撮影
不当な手数料の徴収を繰り返していたとみられる大阪市の業者の立看板。この会社は既に解散している。(千葉県成田市稲荷山)

「誰も買わない価格帯」の広告が大量に出される

これらの業者も、形ばかりの「査定」を行う。所有者から30万円の手数料を徴収するのに、査定額が数十万円では話が矛盾してしまうので、彼らが提示する査定額は、実勢相場の10~20倍にも及ぶ非常識な価格になる。

業者の主目的はあくまで所有者から徴収する手数料なので、査定額が非現実的で、何の反響もなかろうとも、まったく意に介することはない。アリバイ的にネット広告も出す場合もあるが、掲載しているのは、業界団体が運営する、掲載料金のかからないマイナーな物件サイトのみである。

もちろん物件情報が更新されることもない。筆者が知るかぎり、解体前の建物の写真を使い続けたり、既に売却済みの物件まで広告として掲載しているケースもある。

東京都内の業者の看板
筆者撮影
既に電話が繋がらなくなっている東京都内の業者の看板。看板は現地に放置されたままである。(千葉県成田市高)

こうしてネット上には「誰も買わない価格帯」の広告が大量に出される。これから売却を検討する所有者は、こうした情報を目の当たりにし、誤った相場観を植え付けられてしまうという悪循環が起きてしまっている。