これまで「200万~300万円で築30年未満の家が買える」という状況だった千葉県郊外の「限界ニュータウン」で変化が起きている。ブロガーの吉川祐介さんは「相場価格が上昇していて、そうした激安物件はこの1年ほどで姿を消してしまった。少しずつ移住者は増えているが、私には倒錯した状況に思える」という――。
※本稿は、吉川祐介『限界分譲地 繰り返される野放図な商法と開発秘話』(朝日新書)の一部を再編集したものです。
限界分譲地の市場は活況化している
前著でも少し書いたことなのでご存じの方もいらっしゃるかもしれないが、僕は元々文筆業でもなければ不動産業界に関わってきたわけでもない、単なるドライバーだった時に、個人的に千葉県の限界分譲地についてのブログを書き始めたのが、今の生業に至るきっかけだった。
そのためブログ開設当初は、不動産の知識も法律の知識もほとんどないまま、ただ分譲地を見て回っただけの感想に過ぎないような記事しか書いていなかった。
今もそれに近い状態と言えばそうなのかもしれないが、当時は、ただ自分が使うことを想定した分譲地巡りに過ぎないものであって、まさかこの題材で生計を立てることになるなど想像もしておらず、あまり業界や市場の予測といったものを述べることもなかった。
限界分譲地を巡り始めた最初の頃の僕の印象は、かつての投機型分譲地はもはや宅地としての需要を完全に失い、都心回帰、少子高齢化が進む中、今後はますます空き家が増加していくのだろうというシンプルなものだった。
これはおそらく多くの方が「限界ニュータウン」というものに対して漠然と抱いている、あるいはそのネーミングから連想するイメージとも合致していると思う。
人気のニュータウンになる未来は想像できない
だからこそ僕は、予算の都合でやむを得ず利便性の低い「限界ニュータウン」に居を構えるのであれば、おそらく普通の不動産購入よりも念入りに事前調査をし、情報収集を行わないと、将来的に崩落寸前の空き家に囲まれて暮らすことになってしまうのではないかと考え、情報発信・情報交換を目的としたブログを開設したのだ。