千葉県郊外では「売地」という立て看板をよく見かける。売れている気配はないが、なぜ売り出しが続いているのか。限界分譲地を取材するブロガーの吉川祐介さんは「そうした土地の仲介業者は『草刈り』を生業にしているので、土地が売れなくても構わない。売主はそのことを知らないので、土地が売れなくても、草刈り料を払い続けている」という――。

※本稿は、吉川祐介『限界分譲地 繰り返される野放図な商法と開発秘話』(朝日新書)の一部を再編集したものです。

空き地
写真=iStock.com/Yusuke Ide
※写真はイメージです

価格がチグハグな千葉県北東部の分譲地

ブログを開設して以来、僕は千葉県北東部の物件情報を中心に、可能な限り多くのサイトの物件情報を日々チェックしてきた。大手ポータルサイトや、個別の仲介業者のサイトなどを中心に、最近は、無償譲渡を含めた個人間取引を支援する形態の不動産サイトにも、千葉県北東部の分譲地がしばしば出品されるので、そちらも併せてチェックしている。

また、具体的な土地の所在地までは明かされていないが、国土交通省が運営する土地総合情報システムでは、届け出があった不動産取引について、その土地の面積や売買価格の事例などを町名ごとに公開している。

もちろん、広告掲載の価格というものは、基本的にはあくまで売主(あるいは仲介業者)が希望する売り出し価格であって、不動産売買の現場では、買主が指値を入れて値引きされるケースも多々あるので、広告記載の価格が必ずしも実勢相場を反映しているとは限らないのだが、それにしても千葉県北東部の旧分譲地の物件価格は、その事情を差し引いて考えても、値付けの基準が不明瞭すぎると言わざるを得ない。

成約ラインは1区画20万~50万円

一応、一般的な不動産取引(仲介業者を挟んだ売買契約)は、広さにもよるが、1区画20万~50万円、坪単価にして数千円程度のラインで成約している。

だがこれは、400万円以下の物件の売買の場合、売主からもらえる仲介手数料の上限が、18万円(税抜)なので、価格度外視で所有地を手放す決心ができている売主の土地だけがこの価格帯で取引されているにすぎず、この相場で市場が維持されているとはとても言えない。

もう少し具体的に言うと、例えば同一の分譲地内においても、通常であれば最も人気があり高値となるはずの南向きの角地より、両隣を既存の家屋に挟まれた条件の悪い空き地のほうが、坪単価が高いということは珍しくない。

もちろん後者の売地に買い手がつくことなどまずなく、長年売りに出され続けているのだが、長期間売れ残っているからと言って交渉しても値下げが行われるとも一概には言えず、僕が知る限り、もっとも長いものでは10年近くにわたって広告が出され続けている売地もある。