草刈り業者の扱う物件のすべてが誰も買わないような高値で出ているわけでもなく、売却を最優先させたであろう底値で売りに出ていることもよくある。実際僕の知人でも、こうした草刈り業者から格安の土地を購入している人は何人もいる。

「売地」でも売る気がない業者も

土地を売却したいのであれば、足を踏み入れる余地もないほど雑木が繁茂していたり竹林と化しているような土地より、定期的に草刈りを行ってきれいに整地された土地のほうがずっと売りやすい事に疑いはない。管理が行き届かない雑木林は不法投棄を招きやすく、そうなればただでさえ価格の安い土地の市場価値はますます下がってしまう。

また、市場価格が低くて、一般の仲介業者では積極的に扱いたがらないところが多い中、それでもその土地を市場に流通させるためには、草刈りなどの管理業務と兼務しなければ事業として成り立たせることができない。その点においても草刈り業者の意義は高いと僕は考えている。

草を刈る
写真=iStock.com/recep-bg
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しかし僕の経験上、一応土地の物件情報こそ出して、現地に「売地」の看板を立てていても、果たして本気で売る気があるのか疑わしい草刈り業者が存在するのも事実である。

ここでその社名を挙げるわけにはいかないが、気になる土地があって問い合わせても、きわめて応対が粗雑であったり、価格を問い合わせても回答すらなかったりすることがある。これは僕だけでなく、同様に売地について問い合わせた近所の方も同じ話をしていたので、そういう体質の会社なのだと判断せざるを得ない。

いずれにせよ限界分譲地の市場は、そうした土地の売買とは異なる「草刈り業務」で維持されているという特有の事情があるので、どうしてもその価格には、需要に基づく正常な競争原理が反映されていないというか、そもそも根本的に競争原理が働くほどの需要がないエリアであって、不動産売買とは別の異なる市場が形成されているのである。

草刈り業者に依存するしかない現実

そのため千葉の限界分譲地の売値は事実上、売主自身の考え方や売却への意気込みのみに大きく左右されてしまっている。

たとえ日当たり良好な南向き角地であろうと、所有者がその土地を一切必要としておらず、可能な限り早急に手放したいと考えていれば価格は底値に近いところまで下がるし(場合によっては0円にもなる)、たとえ条件が悪くとも、売主が過去の購入金額を忘れられず損切りに踏み切れなかったり、あるいは特に生活に困っておらず売り急ぐ理由もない場合は、いつ売れるとも知れないような価格で広告が出され続けることになる。