過去の話をしたいならば、「失敗談」を選ぶ

50歳を過ぎて、新しい人間関係を築きたいと考えたなら、とくに自慢話には気をつけなければなりません。

過去の自慢話は、しているほうからすると実に気持ちのいい行為なので、脳内に多幸感を感じさせるドーパミンが分泌されます。

自慢話をしているほうは、美味しいお酒に酔っているかのような気持ち良さを感じて話している。しかし、聞かされているほうは美味しくない酒に無理やりつき合わされているような地獄を感じている可能性が高いのです。

ビジネスマンの話を聞く女性
写真=iStock.com/maroke
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過去の話をしたいならば、「失敗談」を選びましょう。

人は他人の幸福な話よりも、不幸な話のほうに興味を抱きます。

著名人の幸せな恋愛や結婚はあまりニュースになりませんが、不倫や離婚の話は大きなニュースとなってSNSでも拡散されます。

工学博士である畑村洋太郎さんが提唱した「失敗学」をご存知でしょうか?

事故や企業不祥事など、世の中に起きた「失敗」を隠蔽いんぺいするのでも、罪を追及するのでもなく、客観的に検証して一般化し、教訓として同じ失敗を繰り返さず、失敗から学ぶノウハウとしていく学問のことです。

世界三大失敗に興味を引き寄せられた学生たち

畑村先生が失敗学を思いついたのは、大学の授業で、当たり前のように建築工学の基礎の話をしても、学生たちが興味を持たないことがヒントになりました。

そこで、学生たちに世界三大失敗といわれる「タコマ橋の崩壊」「コメット飛行機の墜落」「リバティー船の沈没」といった失敗談を映像とともにまず見せました。

すると、そのダイナミックな失敗に興味を引き寄せられた学生たちは、その後の座学でも圧倒的に好奇心旺盛に聞き入ったそうです。

成功よりも失敗にこそ人を魅きつける力がある。そして、失敗をノウハウとして積極的に活かす術を模索し、体系化していったのです。

要するに、自慢話よりも失敗談。たとえば、何か教訓を伝えたいと思っているなら、失敗を交えて反面教師となりえるような体験談を話したほうがいい。

おもしろおかしく、自分の失敗を伝えたほうが、より興味を持ってもらえるのです。