3補選中2戦で「自民の不戦敗」が決定

3補選のうち、自民党が公認候補を擁立して、立憲民主党の候補と事実上の「与野党一騎打ち」に持ち込めたのは、島根1区ただ一つ。長崎3区は立憲の現職と日本維新の会の新人が出馬予定だが、自民党は自主投票、すなわち「不戦敗」となった。残る東京15区で自民党はどうするのか。そこに焦点が集まった。

東京15区補選は、自民党推薦で当選した(後に離党)柿沢未途前副法相が、昨春にこの選挙区と地盤の重なる東京都江東区長選をめぐり、公職選挙法違反容疑で逮捕・起訴され辞職した(後に有罪判決が確定)ことに伴い発生した選挙だ。

この選挙区では前任の秋元司氏も、カジノを含む統合型リゾート(IR)を巡る汚職事件をめぐり逮捕されており(秋元氏は上告審を戦いながら今回の補選に出馬を表明した)、2代続けて自民党議員が不祥事を起こしている。

ファーストの会・乙武氏が「無所属」での出馬を表明

そんな自民党を横目に動いたのが、東京都の小池百合子知事だ。小池氏は3月29日の記者会見で、自身が特別顧問を務める地域政党「都民ファーストの会」が国政進出を目指し設立した政治団体「ファーストの会」が、作家の乙武洋匡氏を擁立する方針であると明らかにした。自民党はこれに相乗りし、乙武氏を推薦する方向だと報じられた。

記者会見で衆院東京15区補欠選挙への立候補を表明する乙武洋匡氏=2024年4月8日、東京都江東区
写真=時事通信フォト
記者会見で衆院東京15区補欠選挙への立候補を表明する乙武洋匡氏=2024年4月8日、東京都江東区

都内の地方選挙で振るわなかった自民党が「負け」を回避するため小池氏の知名度にすがる例は、昨年12月の出直し江東区長選でもみられた。自民、公明、国民民主の3党と都民ファーストの会が推薦した大久保朋果氏が、立憲などが支持した候補や維新の推薦候補らを破り初当選した。自民党は東京15区補選で、それを再現しようとしたのだろう。

野党第1党の立憲民主党は酒井菜摘氏、野党第2党の日本維新の会は金澤結衣氏と、ともに新人の公認候補擁立を決めている。自民党の乙武氏推薦方針によって、ともあれ与野党が戦う(三つ巴ではあるが)構図は確立されたとみえた。

ところがこの10日後、4月8日に行われた乙武氏の記者会見で、その様相は揺らいだ。乙武氏は「無所属での立候補」を打ち上げたのだ。会見場には乙武、小池両氏の顔を大きくあしらい「ファーストの会」と大書された緑色のポスターが、何枚も貼られていたにもかかわらずだ。