辞任表明の直前にリニア問題を「丸投げ」
3日の会見で、「(不適切発言は)ことばの使い方あるいは説明不足ということがあったので、これを直すことはできる」と述べて、陳謝したが、撤回はしなかった。
そのあとで、「リニア問題に区切りがついたことが大きかった」として、辞職の最大の理由をリニア問題の解決の道筋ができたことを挙げたのだ。
国のリニア静岡工区モニタリング会議座長の矢野宏典氏が2日、辞意表明の直前に県庁を訪れたことを明かした。
そこで、矢野氏と2人で話す機会ができた川勝知事は「あとはお任せします」「仕切りをお願いしたい」と言うと、矢野氏からは「君は(モニタリング会議に)来なくていい」とのことだった、という。
それで、知事の手はもう離れた状況となり、川勝知事は「従来とは全く違う次元にきて、矢野流で解決できるので、注目してほしい」などと述べた。
実際には、これではいまのところ何が何だか全くわからない。
冒頭に説明したように、リニア問題に区切りがついたのではなく、単に古くから関係が深く、県の一般社団法人ふじのくにづくり支援センター理事長でもある矢野氏に丸投げしただけで、何の解決にもなっていない。
尊敬を集めた「博覧強記」は、身勝手な時代錯誤となった
辞意表明の本当の理由は何か?
毎回、会見ごとに若い記者たちからこぞって“攻撃”されることに耐えられなくなったのが本音だろう。
筆者の目には、御年75歳の知事が、孫世代とほぼ同じ若い記者たちにたじたじとさせられる疲れ切った姿は、あまりにも哀れに映った。
過去の記者会見では、オックスフォード大学の博士号を持つ元早稲田大学教授である川勝知事が、記者たちを学生のように教える余裕があり、その博覧強記には取材陣からも尊敬を集めていた。過去と現在のギャップはあまりにも大きい。
リニア問題を通して、川勝知事の嘘つきの「本性」が明らかになり、若い記者たちとの価値観の違いがはっきりとした。
エリート意識、差別意識が強く、それが当たり前の時代に生きてきた川勝知事にとって、多くの若い記者たちからの“総攻撃”は何よりも屈辱的だったはずだ。
時代が変わったのに、自分自身を変えられない時代錯誤の価値観に固執したことで墓穴を掘ったのである。