「県庁は知性高い」「野菜売るのとは違う」と職業差別

まず3日行われた知事会見のもようを振り返ってみる。

4月3日の記者会見
筆者撮影
4月3日の記者会見

川勝知事は「辞職の経緯となる理由は2つある。わたしの不十分な言葉遣いで、人の心に傷をつけた。これはやはり大きい。これは意図せざる形で人が傷ついていることを指摘された。気づいてなくて、言われて気がついたことだから、大きく反省すべきだ。これが繰り返されていることもあり、大きな辞任の理由だ。

これ自体はことばの使い方あるいは説明不足ということがあったので、これを直すことはできる」と述べている。

川勝知事の辞意表明の直接のきっかけは、4月1日の新規採用職員向けの訓示で職業差別ととれる発言を行ったこととされていた。

2日付読売新聞のみが地方版で「知事訓示『県庁は知性高い』『野菜売るのとは違う』」という見出しの囲み記事を報じた。

読売の記事には、川勝知事が「県庁はシンクタンク(政策研究機関)だ。毎日毎日、野菜を売ったり、牛の世話をしたり、モノを作ったりとかと違い、基本的に皆さま方は頭脳、知性の高い方たち。それを磨く必要がある」などと述べたとある。

この記事をテレビ各局が追い掛け、SNSなどで知事の「差別発言」が広がり、県庁には400件を超える抗議の電話やメールが殺到した。

筆者は、2日午後6時から、この件で、川勝知事の説明を求める囲み取材が行われることを聞いた。当然、いつも通りにわけのわからない釈明を聞かされて終わると考えていた。

2021年には「御殿場にはコシヒカリしかない」と地域差別

まさか、その席で辞意表明をするなど県幹部も全く知らず、その後のテレビ報道を見て、筆者も驚きの声を上げた。

これまで川勝知事は失言暴言などさまざまな不適切な発言を繰り返しても、何とか切り抜けてきたからだ。

2021年暮れ、静岡県議会で、「御殿場にはコシヒカリしかない」とする地域差別発言を理由に辞職勧告決議が採択された。

それに対して、川勝知事は「(わたしは)権力のある方に対しても、間違っていると思えば、失礼であることを承知しながらも、はっきりと物申す。南アルプスのトンネル工事は責任をもって県民にどうなっているのかを伝えるという、これまで通りの仕事をしながら責任を取っていく」などと述べた。

これが、これまでの不適切発言を行ったあとの逃げ方だった。

リニア問題を挙げれば、それで良かったのだ。失言暴言の多い川勝知事だが、リニア問題に関して水や環境を守るという主張を正しいと思い込んでいる県民が多いのも確かである。

今回、その神通力が失われたのには、伏線がある。3月26日の記者会見だった。