国の認める「機能性表示食品」である小林製薬の「紅麹サプリ」は、なぜ健康被害を生んでしまったのか。薬剤師の鈴木素邦さんは「日本の健康食品・サプリメントには明確な定義がなく、中には国の審査を受けずに流通している『ただの食品』もある」という――。
なぜ「紅麹サプリ」で健康被害が発生したのか
小林製薬のサプリメント「紅麹コレステヘルプ」を摂取した方のうち、5人が死亡、延べ100人以上が入院するという深刻な健康被害が発生しています。
厚生労働省によると、サプリメントの製造過程において、「プベルル酸」という予期しない物質が発生したとされていますが、まだ健康被害の正確な原因は明らかになっていません。
健康食品やサプリメントには国が定めた安全基準があるのに、なぜこんな大事件が起きてしまったのか。疑問に思われた方も多いのではないでしょうか。
実は、日本にはサプリメントの「定義」はありません。「サプリメントは健康に良い特定の成分のみ取り出し、飲みやすい形にした商品」という「暗黙のルール」があるだけです。
サプリに病気を治す効果はない
「健康食品」(サプリ含む)は、「もともと健康な人」が食べたり飲んだりすることで「健康維持につなげる」のが目的であり、「病気を改善するため」に作られたものではありません。
一部には、すでに病気になった人が回復するためにつくられた健康食品もありますが、基本的には病気を治すものではなく、「食品の一つ」と考えるほうが良いと思います。
なお、「健康食品」には国が定める区分があります。中でも特定の効果効能が見込める健康食品として、図表1のように「特定保健用食品」「特別用途食品」「機能性表示食品」「栄養機能食品」があります。