藤原道長とはどんな人物だったのか。歴史評論家の香原斗志さんは「出世欲と権力欲が人一倍強かった。それは2人の妻とその子供たちへの接し方を見るとよくわかる」という――。
開幕した第36回東京国際映画祭のレッドカーペットを歩く柄本佑さん
写真=時事通信フォト
開幕した第36回東京国際映画祭のレッドカーペットを歩く柄本佑さん(=2023年10月23日、東京都千代田区の東京ミッドタウン日比谷前)

これから大河で描かれる藤原道長の婚活

ありとあらゆる政略を駆使して自分と一族の栄華を極める。史料から読み取るかぎり、藤原道長とはそういう人物だと思っていたので、「光る君へ」で柄本佑が演じている道長、すなわち正義感があり、人の心に敏感で、打算のない恋愛をする道長像には、多少の違和感を覚えていた。

もっとも、それが若さだということもできる。康保3年(966)に生まれた道長は、「光る君へ」の第10回「まどう心」(3月17日放送)では、まだ数え21歳ほど。身分が違うまひろ(紫式部のこと、吉高由里子)に真剣に恋しても、不思議ではない年齢なのだろう。この回でも2人は密会し、熱い口づけを交わした。

しかし、ここから先はドラマでも、ようやく道長らしさが発揮されるのではないだろうか。というのも、道長はまひろに結婚を申し込んだが、正妻でなければ嫌だといわれて、彼女との関係にケリをつけたからである。

道長はいまや摂政の息子。それが無官の下級貴族の娘を正妻に迎えるなど、当時の常識から外れている。それを求めたまひろが非常識なのである。脚本家は、紫式部の常識にとらわれないスケールを描くために、彼女にそんな要求をさせたのかもしれないが、ともかく、道長はここから、常識的な婚活に勤しむことになる。