2つ目は、相手の意見にまずは同意をすること。自分と正反対の意見を主張する人にも、同意できる部分は必ずあるものだ。たとえば初期費用について顧客から強い不満をぶつけられたとしよう。しかし、よく話を聞いてみると「初期費用が増えても成果を出すまでの期間は変わらないため、目標達成までのハードルが上がってしまう」との懸念がその理由だったりする。

この場合、意見の対立があるといってもプロジェクトを成功に導きたい気持ちは共通だ。こうした同意できる部分を発見できれば、それを共通の基盤として一緒に話し合うきっかけをつかむことができる。

3つ目は尊重と同意を踏まえ、顧客と一緒に考えていくこと。受注に結びつけるには、買い手のパートナーになってアドバイスができることが求められる。そのためには顧客と同じ立場で一緒に考えていく必要があるが、営業担当者と顧客は常に利害が一致するわけではない。

顧客と営業担当者の間に摩擦が起こる一番の原因は、「売りたい時期」と「買いたい時期」のズレにある。営業担当者は今月中に売り上げを立てたいが、顧客は急ぐ必要はないと思っているような状況だ。

このような場合はやはり営業担当者が顧客の時間軸に合わせるべきだ。「どうしても今月契約してほしいんです」と迫ると、かえって受注の確率を下げかねない。

また、共感は相手に伝わって初めて効果が出るもの。相手に共感するだけに留まらずそれを伝える表現も必要だ。

「本当にそうですね」
 「私も同じ気持ちです」

このように相手の話を受け入れる「肯定表現」を使用することがそのポイントとなる。仮に同意できない場合でも、「プロならではのご意見ですね」などと意見を尊重するコメントを返すだけで、相手の印象は変わってくる。

(構成=宮内 健 撮影=早川智哉)