学歴を使ったマウンティング「学歴マウント」

ここからは、直近5年間のマウント事例を独自の方法で収集・分析し、頻出パターンを分類した5つのカテゴリーの中から、「学歴マウント」の一部をご紹介する。

自分が高学歴であることを自慢したり、反対に相手の学歴が低いことをけなしたりする行為を「学歴マウント」と呼ぶ。一般的に、学歴マウントの材料としては出身大学が用いられることが多いが、一部の名門高校出身者の場合、出身高校がマウントの材料となる場合がある。また、出身校ではなく、博士号の有無で学歴の上下を区別しようとするケースも見られる。

「私は学歴を気にしない」「学歴主義は好きではない」と強調する人がいるが、そういう人ほどじつは学歴を気にしていて、自分の子どもの学歴にこだわる傾向があったり、当の本人もかなりの高学歴だったりする。

仕方なく東大マウント

「もともと音大志望でしたが、親に言われて仕方なく東大を受験することにしたんです」
➡東大に合格する能力を持っているだけでなく、芸術などの分野においても優れた才能を持っていることをアピールする
「京大インド哲学科が第一志望だったのですが、担任に脅迫されて、仕方なしに東大文一へ入学することになりました」
➡周囲の期待から自分が本当に興味があった分野への進学を断念せざるをえず、仕方なく東大進学を決めたことを一方的に語る
「ハーバードかイェールに行くつもりだったのですが、親の介護のこともあったので、仕方なく東大進学を選びました」
➡海外の名門大学への進学が実力的に可能だったことを示し、自分にとって東大は唯一の選択肢ではなかったことを強調する
東大生の中でのマウントの取り合い

東大受験生の中でも最上位層の学生にとっては、合格すること自体はあたりまえであり、「いかにたいした対策もせずに合格したか」を示すことが重要となる場合がある。ガリ勉して東大に合格したところで周囲からそれほどリスペクトされず、「高3夏から受験勉強を始めて現役で東大合格」などのスタイルがマウントの文脈では最も望ましいとされる。

東大出身の起業家がメディアのインタビューなどで「学生時代はバンド活動に明け暮れた」「受験勉強は基本的にしたことがない。そもそも高3の秋までE判定だった」と述べたがることにも、同様の背景があるのではないかと思われる。

海外名門大学進学のトレンド

ここ数年、東大を飛び越えていきなりハーバードやイェール、スタンフォードといった海外の名門大学に進学するトレンドが、開成や灘といった超進学校の生徒を中心に生まれつつある。「学費の観点から東大ではなくハーバードを選ぶしか選択肢がなかった」といった新たなマウントのパターンも生まれてきており、注目すべき動きと言えるだろう。

ちなみに、学力的に東大に届かず東大を目指すことを断念した親には、自分の子どもを使った「リベンジ狙い」目的で、海外の名門大学に進学させるために英語教育に躍起になる傾向があると言われている。