「私は、この人に受け入れられている」という安心感
シュミットは4カ月後に再調査をしましたが、そのときにも社会に対する不安の軽減効果は持続していたそうです。
自分に向けて微笑んでいるように見える人は、少なくとも、こちらに好意を持ってくれているということです。
そういう人に目を向けるようにすれば、「私は、この人に受け入れられている」という安心感が得られて、そんなに緊張も不安も感じなくなるのです。
こちらに向かってムスッとした顔をしているとか、無表情の人などを見ていると、「私の話がつまらないのではないか」「私が緊張していることを、心の中であざわらっているのではないか」などと、ネガティブな考えばかりが浮かんでしまいますので、そういう人のほうはなるべく見ないようにしたほうがいいのです。
人前で話すことはだれにとっても緊張することですし、できれば避けたいと思うかもしれません。
でも、そんなに逃げてばかりもいられないときには、ぜひこのテクニックを思い出して試してみてください。
怒った人を見るとストレス反応が起こる
私たちは怒っている顔の人を見ると、自然にストレス反応が起きます。
「ひょっとすると暴力を振るわれるのではないか」「殺されることもあるのではないか」と危険を感じるので、身体が自然に反応してしまうのです。これは人間に備わった本能的な反射のようなものです。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校のマシュー・リバーマンは、怒った顔やうれしい顔などの表情を見せたとき、私たちの脳がどのように反応するかを、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)という方法で確認しています。
すると、怒った顔の人を見ると、私たちの脳の中でネガティブな感情にかかわる扁桃体や他の大脳辺縁系が活性化することがわかりました。
怒った人を見ると、ストレス反応が起こるのです。
ところが、こういうストレス反応は、ちょっとしたやり方で抑制できることもリバーマンは明らかにしています。
その方法とは、「感情ラベル法」。相手の顔を見て、それがどんな感情に当てはまるのかのラベルを考えるようにすると、扁桃体の活動を抑制できたのです。