バブル崩壊の中国リスク+「もしトラ」リスクのWパンチ

株価リスクの3つ目は中国問題。中国は不動産バブル崩壊で経済が減速している。日本の企業業績が好調な中でも、冒頭で紹介したオムロンのように、中国ビジネスに特化してきた企業は業績が悪くなっている。香川さんは「資生堂やNIDEC(ニデック)など中国向け事業に力を入れてきた企業は調子が悪い」と話す。

東京電力の福島原発の処理水問題などを受けて、中国では化粧品の不買の動きもあるとされる。資生堂は中核の中国事業に影響が出ており、昨年後半に今期業績予想を下方修正している。

世界トップの総合モーターメーカーのニデックも、中国の電気自動車市場で価格競争が激化していることなどから、今期業績予想を今年に入り下方修正している。

「中国の景況感が悪化しています。日本が経験したバブル崩壊後の構造不況にも似ており、中国リスクは見逃せません」(香川さん)

酒井さんも「中国の国内消費マインド低迷が継続します」と指摘し、「中国経済の弱さが思った以上だと、24年前半にかけて日本株の調整があるかもしれません」と話す。

株式市場のグラフと中国の紙幣
写真=iStock.com/claffra
※写真はイメージです

中国リスクについては、米大統領選挙で共和党の有力候補のトランプ前大統領のリスクも指摘されている。トランプ前大統領は選挙に勝って就任すると、中国から米国への輸入関税を60%に引き上げたいと主張している。

香川さんは「トランプさんお得意の駆け引きなのでしょうが、彼は日本にも付き合えと言ってくるでしょうし、そうなると中国は報復措置を取り、被害をこうむるのは対中ビジネスをしているところ。新米中冷戦の影響が株式市場に不確実性をもたらしてきます」という。米大統領選は「もしトラ・リスク」が「ほぼトラ・リスク」になってきているとも。

酒井さんも「米中対立でサプライチェーン分断のリスクがあります」と指摘する。サプライチェーンとは原材料や部品・資材などの調達網のことで、製造業は中国を含めたサプライチェーンの上に成り立っている。中国経済についても「24~25年にかけて成長率が鈍化していく可能性があります」とも話す。

こうして「中国リスクは今後、株式市場の不安要因になってくる可能性がある」と香川さんはいう。特に、トランプ候補の米大統領就任の可能性が高まれば、高まるほどだ。

著名投資家のウォーレン・バフェット氏が率いる投資・保険会社のバークシャー・ハサウェイでは手元現金水準が過去最高を更新したとされ、いま魅力的な投資先が見つからないのが理由と報じられている。バフェット氏の投資スタンスについては、世界の金融市場関係者が注視している。香川さんは「バフェット氏が米国株について『カジノ状態』と発言したようで、過熱感があります。米国株はスピード調整を経たほうが健全になるとみています」と話す。

米国株が調整に入れば、日本株も影響を受ける。34年ぶりに最高値を更新してきた日経平均株価だが、死角があちらこちらに見え隠れしている。

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