「エヌビディア3兄弟」のおかげで日経平均も上昇
まず、日経平均株価の上昇が急ピッチなこと。株価は日々大きく変動するため、たとえば過去100日間の平均値を算出してグラフ化した移動平均線の動きと比較する分析手法がある。日経平均株価の動向を100日の移動平均と比べると、その乖離が大きくなっており、「短期的に過熱している」という。
株価は米国でも上昇し、それを好感して日本株も上がっているが、日米の株式市場はAI(人工知能)・半導体ブームの様相となっている。日経平均株価が史上最高値を更新した際に注視されていたのが、人工知能コンピューティングで世界をリードする米半導体メーカーのNVIDIA(エヌビディア)の決算だった。この決算好調を確認して、日本を含めて世界の株価がさらに上昇したと、香川さんは指摘する。
「日経平均株価には値がさ株のハイテク銘柄の上昇が大きく影響しています。日本経済の実態以上に日経平均株価が押し上げられてきました。折からのドル高・円安もあり、スポーツ競技でいえば『追い風参考記録』のようなものです」(香川さん)
日経平均株価を構成する225銘柄のなかでも株価水準が高く、その変動が日経平均に大きな影響を与える銘柄を「値がさ株」と呼ぶ。
今回の日経平均株価を押し上げた値がさのハイテク株のうち、特にソフトバンクグループ、東京エレクトロン、アドバンテストを株式市場では「エヌビディア3兄弟」と呼んでいる。米国のエヌビディアの業績が好調で、その3兄弟の株価も年初から急騰して、日経平均株価の上昇をけん引してきたと、香川さんはいう。
巨額資金運用の年金基金がいったん売る可能性
株価リスクの2つ目について、香川さんは「米国株の上昇も、短期的には過熱感が否めない」と話す。米国株が調整局面に入ると、それにつられて上昇してきた日本株に対し、上昇相場をリードしてきた海外投資家が株価上昇で一定の達成感もあって「日本株の売り越しに転じてくる可能性がある」という。
海外投資家が日本株の買い越しから、売り越しに転じる可能性のほか、香川さんは「公的年金や企業年金の運用資金のリバランス、つまり資産再配分の売りがかさんでくる可能性もある」と話す。
3月末の決算期末に向けて、株式投資も含めて巨額の資金を運用している年金基金が、日本株の上昇により一定の達成感が出たため、まずいったん売って、値が下がったところで買い直す可能性もあるとみている。実際に売却しなくても、「年金基金が日本株を売るかもしれないという観測だけで、日本株が下がる可能性もあります」と香川さんは指摘する。