安宅さんの場合

ヤフー執行役員 事業戦略統括本部長 
安宅和人氏

1週間前、1カ月前の段階ですべきことは何か。それは、「最終的にこのレベルの答えを出さなければならない」というものを、言葉とビジュアルでイメージすることです。

マッキンゼー時代、ヘルスケア領域の企業からデューデリジェンス(事業精査)のプロジェクトを請け負ったことがあります。ある事業体を買収する価値があるかどうか、1週間で答えを出してCEOにプレゼンせよというものでした。

これほど短期間だと、1時間のロスが致命的になり、半日無駄にすれば爆死確実といえるプロジェクトです。このときはあまりに短期間だったため、最終形のイメージをつくる前にメンバーのモチベーションを高めるステップを取り入れました。

「どんなに不可能と思えても、クオリティの高いアウトプットを出し、クライアントに喜ばれてわれわれも楽しめる究極の事例をつくろう」。4人のプロジェクトチームのマネジャーだった私はこう考え、最初の1時間でアスピレーション(向上心)を高めるためのチーム目標を皆で立てました。

その後、最終形のイメージづくりを始めます。まず、どういう問いに対してどういう答えを出さなければならないのか、1~2時間かけて徹底的に議論します。CEOが判断するために不可欠なものは何か、これにケリがつかなければ論理的な答えが引き出せないというポイントの洗い出しです。

初日の午前中に5~6点ほど、カギになる論点を明らかにし、こういうレベルでこういった答えが出れば大丈夫という最終形のイメージをつくります。プロジェクトでもプレゼンの準備でも、期限が決まっているものに取り組むときは、初日のうちにこの作業を行うことが成否を分けるともいえます。