顧客の体調や機嫌によって、商談の成否は大きく左右する。各社トップ営業たちは、どのようにして相手の心のリズムを読んでいるのか。最高のタイミングでアポ入れ、商談設定をする秘訣に迫った。

相手に聞く耳があるかどうか、見極めが大切

<strong>富士ゼロックス 営業本部中央第一支社●藤本光泰</strong><br>1969年、埼玉県生まれ。入社後、新規顧客開拓の営業に配属。2003年ドキュメントソリューション営業部へ。平日も集中できる場として図書館や喫茶店を活用。
富士ゼロックス 営業本部中央第一支社●藤本光泰
1969年、埼玉県生まれ。入社後、新規顧客開拓の営業に配属。2003年ドキュメントソリューション営業部へ。平日も集中できる場として図書館や喫茶店を活用。

入社してから12年の間、複合機やプリンターなどの新規開拓業務、いわゆる飛び込み営業を行っていた藤本光泰さん。

「1日10件、15件と訪問数にこだわる営業をメーンにしていて、それなりに数は出るんですが、契約が長続きしないというジレンマを抱えていました。そして数年経ったあるときに気づいたんです。お客さんの業務内容を深く理解して、本音を引き出し、本当に必要なものは何なのかを仮説として提案する。相手と対話を重ねて対等な関係を築くことが大事なことなんだと」

営業方法を変えてから訪問数は減ったが、目標値の200~400%の成績を収めている。量よりも質。このスタイルはエネルギー業界の5企業グループを担当するようになってからも変わらない。

「6年前にこの部署に移ったときは、1カ月以上、業界と各企業の研究に明け暮れました。ネットや書籍を利用して関連情報を仕込み、決算報告や事業報告書にも目を通して、どんな事業に進出しようとしているのか、そしてそのためにはどんなシステムが必要なのかといったことを考えました」

藤本さんは、商談に至るまでの下調べを徹底的に行う。「臆病な性格だから」と本人は謙遜するが、ここに成功の鍵がある。毎日1回は落ち着いてものを考えられる喫茶店や図書館に出向いてさまざまな仮説や、次回商談のシミュレーションを練る。同時に、足繁くクライアント先にも通い詰めた。

「たくさんの人と会って社内の情報を得ることも大切です。商談した人は、1企業グループあたり100~200人、全部で500人を超えます。業界の体質がボトムアップ型なので、課長やグループ長といった実務者が中心です。総務部、システム部などあらゆる部署に顔を出しています」