大雨が降るたびに、渋谷の一帯が水浸しに…

渋谷もまた、高度成長期に大きく姿を変えた街のひとつである。

東京オリンピックに向けての準備が急がれた際、都内の各所で川をふたで覆い、その上を道路とする(暗渠あんきょ)策が進められたが、渋谷もそんな工事が行なわれたエリアである。

ふさがれた川は渋谷川。新宿御苑や明治神宮の池の水などが流れ込み、宇田川などと合流して渋谷へと至る川である。地下に隠れてしまったため、あまり知られていないが、実際に今も存在する。暗渠となったあとも、渋谷駅の南側にある稲荷橋のところで再び姿をあらわし、恵比寿駅の方向へ流れている。

暗渠となった背景のひとつには、渋谷の地形が関係している。

道玄坂、スペイン坂、宮益坂など、渋谷には坂が多く、渋谷駅からどこへ向かうにも坂を登らなければならない。駅周辺がすり鉢状の底にあたる地形だからだ。それゆえ、かつては大雨が降るたびに、渋谷川の水があふれ、一帯が水浸しになるという問題があった。

そこに高度成長の波が押し寄せ、渋谷川で水質汚染が進み、悪臭を放つようになった。

こうした状況を受けて、渋谷川ではコンクリートによる護岸工事が行なわれ、川の上にふたがされたのである。キャットストリートは、かつては渋谷川歩道と呼ばれた通りで、暗渠となったのは1961(昭和36)年ごろのことだ。

銀座線の渋谷駅が地下鉄なのに地上にあるワケ

渋谷のこの特異な地形は、今日のユニークな街を生んできた。

たとえば、東急百貨店東横店。2013(平成25)年3月に東館、2020(令和2)年3月に西館・南館も閉館してしまったが、ここは川の上をまたぐように建てられた珍しいデパートだった。渋谷川が流れているため、地下一階の売り場がなかったのである。

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また、銀座線の渋谷駅が地下鉄でありながら、地上三階に設けられたのも、この地形のためである。銀座線はいち早く戦前に開通し、比較的地下の浅いところを通っている。渋谷まで路線を延ばす際、大きく勾配をつけて谷底をくぐらせるより、あまり高さを変えずに地上を走らせるほうが、コストも安く、かつ容易だったからだ。

結果、渋谷駅では地下鉄銀座線が地上の三階で、その下(二階)にJRが走るという不思議な状況が生まれたのである。

渋谷駅周辺は現在も再開発が進められている。東急東横線は渋谷駅と代官山駅の間の約1.4キロが地下化し、2013年3月、渋谷ヒカリエ地下五階に東横線の渋谷駅が移って、副都心線との相互直通運転が始まっている。渋谷の変貌はまだまだ続いている。

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