※本稿は、西村ゆか『転んで起きて 毒親 夫婦 お金 仕事 夢 の答え』(徳間書店)の一部を再編集したものです。
出会ったばかりの頃は白馬の王子様
出会ったばかりのころのひろゆき君はまるで、私を救いに来た白馬の王子様だった。
私が出社してパソコンを立ち上げると、メッセンジャーアプリから「おはよう」のメッセージが来る。仕事を終えるころには、必ずといっていいほど連絡をくれ、おしゃれなお店を探して、食事に連れていってくれた。
私もそんなひろゆき君を頼りにするようになっていた。
朝、具合が悪くなって会社に行けなかった日は、ひろゆき君にメールをした。すると、彼は駅まで迎えにきてくれて、一緒にご飯を食べようと言ってくれて、彼の家で一緒に料理をして食べた。
そのとき作ったものは、パスタとかそんな簡単なものばかりだったけれど、彼と一緒に食事をするうちに、なにかが変わっていった。
「食べる」ということが、ストレス発散の手段ではなく、楽しいことだと思えるようになっていったのだ。
そのとき、私は25歳で、ひろゆき君は27歳。10代のころのような大げさに騒ぐような恋ではなかったけれど、この人との時間を、これからも大切に過ごしていけたらいいなという静かな願いがそこにはあった。
「一緒に生きていく人」という言葉が、自然と頭に浮かんだ。
たぶん、出会ったタイミングが奇跡的によかったのだと思う。
ひろゆき君は、過去の恋愛の反省から、私に丁寧に向き合おうとしてくれたし、私は散々な失恋の後で、自分を変えようと努力している最中だった。
もし、タイミングがほんの少しでも早かったり、遅かったりしたら、私たちがパートナーとして歩んでいくことはなかったかもしれない。
「甲斐甲斐しい彼氏」は半年で終わった
甲斐甲斐しい彼氏を演じていたひろゆき君だったけれど、付き合って半年くらいすると、すみやかに通常モードに移行していった。
おしゃれで楽しいデートプランをまったく考えなくなった。
私と会うときにジャケットやシャツを着るのもやめた。
そして、いつでもTシャツと短パン姿でゲームをしている人になった。
それでも、私の彼への信頼は変わることがなく、いっそう深くなった。
彼がなんだかんだ言って、ちゃんと話ができる人だったからだ。
一緒にご飯を食べることは2人の習慣になり、彼のそばが私の居場所になった。