考え方のクセを知れば感情と付き合いやすくなる

また、「自分が物事をどう捉えることが多いのか」という考え方のクセを知ることは、一度立ち止まってその感情が本当に正しいものかを客観的に見つめ直すモニタリングにも役立ちます。

自身の傾向を把握しておけば、「また、あの考え方のクセが出ているから、気をつけよう」と、悪いほうへ向かわないように方向転換できますよね。その都度、軌道修正できれば、感情の波も小さく抑えられるはずです。

これから紹介する代表的なディストーションの例を、自分自身の考え方と照らし合わせてみてください。考え方のクセを今すぐガラッと変えるのは難しいですが(無理に変えようとしなくてもいいものかもしれませんし)、こうした考え方のよくないクセがあるということを知るだけで、視点が変わることもずいぶんあるはずです。

ディストーションの正体をつきとめるために、まず、最近感じた、怒りや不安、心配、焦り、執着、もやもやなどのネガティブな感情を思い出します。無意識にわきあがってきたネガティブな感情や、あなたがいま感じている嫌な気持ちを、なるべく包み隠さず言葉にしてみましょう。

あわせて、ネガティブな感情が生まれた背景や原因、そのネガティブな考えによって、どのくらいの苦痛やストレスを感じているかも考えてみます。

そのネガティブな感情の背景には、ディストーションがあるかもしれません。ここから先は、当てはまるものがないか考えながら読んでみてください。

「優勝できなかった…やってきたことは無駄だったんだ」

・ゼロヒャク思考

物事を「0か100か」という極論のみで考えてしまう思考スタイルです。「全か無か思想」ともいわれ、完璧主義の人がなりやすいです。「白黒つけないと気が済まない」「失敗したら何もかも意味がない」というように二者択一の思考パターンに陥っています。

このディストーションがかかっていると、たとえば優勝を目指していた大会の決勝戦で負けてしまったときに、「優勝できなかったから、すべて無駄だった」と感じてしまうかもしれません。

何か一つマイナスな要素があったとしても、「全部ダメだ」ではなく、「これはできないけど、この部分ならできる」とか、「いまはダメだけど、これからよくなってくるはずだ」といった「間」に目を向ける習慣をつけるといいですね。

たとえ優勝を逃したとしても、0か100かではなく、「準優勝できたことは誇っていい」「今まで努力してきた事実は変わらない」「努力の過程で得たものがある」といった勝ち負けの間にあるものに目を向けられれば、まいにちのクオリティは格段に上がっていきます。

また、ゼロヒャク思考が他人に向けられると、人の小さなミスが許せず、厳しい対応をとってしまうことにもつながります。

さらに、すべてが白か黒にはっきり分けられるものだと思い込んでいると、「ワクチンは効くのか効かないのかはっきりさせて!」といった態度をとるようになってしまうのも大きな問題だと思います。

本来、「こういう人にはどれだけの効果の可能性が認められていて、一方でこういう人にはこんなリスクがどれだけの確率で予想されている」といったさまざまな要素がグラデーションで存在するのが現実であり、「必ず白か黒で分けられるはず」というのは、現実をゆがめて見ている幻想なのです。