ネガティブな感情とどう付き合えばいいか。ハーバード大学准教授の内田舞さんは「人にはそれぞれ考え方のクセがある。現実をゆがめて悲観的に物事をとらえる“認知のゆがみ”はストレスの原因になりやすい」という――。
※本稿は、内田舞『まいにちメンタル危機の処方箋』(大和書房)の一部を再編集したものです。
忘れ物をして友人に借りたとき、どんな考えが湧くか
人はそれぞれ、考え方のクセのようなものを持っています。
ごくわかりやすい例でいえば、忘れ物をしてしまって友だちに貸してもらうことになったとき、「自分はなんてダメなヤツなんだ。友だちに迷惑もかけたし」と落ちこむ人もいれば、「友だちが貸してくれてラッキー! しかもこれを機に仲良くなれるかも」とワクワクする人もいますよね。
こうした物事に対する考え方のクセが、私たちを苦しめ、生きにくくもします。とくに、過度に悲観的に物事を捉えてしまっている場合、それはもはや現実をゆがめて認識してしまっている、さらにいえば何かに化かされて幻想を見てしまっているともいえます。そのクセを直さないかぎり、まいにちを生きていくのは相当に困難なものになってしまいます。
このような、現実をゆがめて認識してしまうほどのクセを、脳神経学的には、「認知のゆがみ(Distortion/ディストーション)」といいます。ディストーションがよいほうへ働くこともなくはないのですが、これが無意識に働き、ストレスの原因となっていることがままあるので、その正体を明かしておいて損はありません。