「長く寝る人ほど、早死にする」という明確な結果

しかし、平均寿命の観点から見れば、アメリカは一番の劣等生です。

アメリカ人の平均寿命と睡眠時間の関係を見れば、「睡眠時間を長くしたからといって、健康に長生きできるとは限らない」ということがお分かりいただけるのではないでしょうか?

遠藤拓郎『75歳までに身につけたいシニアのための7つの睡眠習慣』(横浜タイガ出版)
遠藤拓郎『75歳までに身につけたいシニアのための7つの睡眠習慣』(横浜タイガ出版)

実際に、私が2015年に発表した「アメリカ人の起きる時間とうつ」に関する英文論文でも、60歳から、起きる時間が急激に遅くなり、抑うつ傾向が強くなることを明らかにしました。

過労死などの一部の問題を除けば、日本人は「今の短い睡眠スタイル」をそのまま維持するべきなのです。

そもそも日本で「睡眠負債」という考え方が広まった背景には、「働き方改革」がありました。働き方改革を推進したい国にとって、睡眠負債という考え方が好都合だったのです。

2018年に「働き方改革関連法」が成立しましたが、その背景には、過労死や人口減少による労働力の不足を解決させるため、長時間労働を抑制する意図がありました。

例えば、労働力の不足による長時間労働の非効率化を補うため、政府は労働環境を改善することで、労働の生産性を高めようと試みたのです。

その際、睡眠負債という考え方は、まさに格好の材料でした。

NHKなどでも取り上げられて、話題になりました。

睡眠負債という考え方に基づき、「日本人は働き過ぎ」「もっと寝なければダメ」というストーリーを広めることによって、「働き方を改革しなければならない」というムードを醸成していったのです。

しかし、国際比較のデータを見れば分かるとおり、睡眠時間と平均寿命の関係は「逆相関」になっています。つまり、「睡眠時間を長くすればするほど、健康に長生きできる」というのは幻想にすぎないのです。

実際に「日本人の睡眠」を詳しく調べた研究データでも、「長く寝る人ほど、早死にする」という明確な結果が出ています。

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