中高年が健やかに過ごすために、睡眠時間はどれくらい必要か。三代にわたって90年以上睡眠研究を続ける睡眠医療専門家の遠藤拓郎さんは「我々は子どもの頃から『8時間は寝なさい』と教えられてきたが、それは中高年にそのまま当てはまるわけがない。歳を取ったら、ご飯の量を少なくするように、睡眠指導や睡眠習慣も変化させていくべきだ。中高年になったら『8時間は寝ないといけない』ではなく『ぐっすり8時間も眠れない』が正解である。」という――。(第2回/全3回)

※本稿は、遠藤拓郎『75歳までに身につけたいシニアのための7つの睡眠習慣』(横浜タイガ出版)の一部を再編集したものです。

ベッドで上半身を起こしている人のイメージ
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病気に侵されていた可能性を排除したデータで比較する

図表1をご覧ください。

これは北海道大学大学院の玉腰暁子教授が、日本全国の40~79歳の男女、約11万人を対象に「睡眠時間の長さ」と「10年後の死亡率」の関係を調べたグラフになります。

図表1のグラフは「10年以内に死亡した人の割合を示したデータ」です。

一方、図表2のグラフは、図表1のグラフから「直近の2年以内に死亡した人を除いたデータ」になります。

なぜ、「2年以内に死亡した人」をデータから除いたのでしょうか?

少し分かりにくいと思いますので、噛み砕いて説明しましょう。

例えば、「直近の2年以内に亡くなってしまった人」というのは、すでにガンなどの病気に侵されていた可能性があります。

そうなると「ガンの影響で睡眠時間が短い」とか、逆に「ガンの影響で睡眠時間が長い」といった可能性が出てきます。

「睡眠が寿命に与える影響」のみを知りたいわけですから、「健康状態が睡眠と寿命に与える影響」は、できる限り排除したいわけです。

そこで、「直近の2年以内に亡くなった人」をデータから除くことによって、「致死的環境が睡眠に与える影響を排除できる」という、あくまでも「建前」で作られたデータが、図表2のグラフになるのです。