週例テストに追われる子どもたち

塾によってはその週の学習単元の定着を診る「週例テスト」を課しています。これがわが子の学習を進める上での「ペースメーカー」になっていれば何の問題もありません。

一方、「週例テスト」の得点にあまりにこだわってしまうと、日々の学習がいつしか「週例テスト」で高得点を獲得するためのものに化してしまいます。「塾のカリキュラムに即しているので、それで構わないのではないか」といぶかしく思うかもしれません。

わたしが問題視しているのは、これによって「一夜漬け」的な学習習慣を子どもたちが身に付けてしまうという点です。つまり、「週例テスト」にギリギリ間に合わせるような学習がデフォルトになるのです。皆さんも「一夜漬け」で勉強したことはありませんか。

わが身を振り返ればお分かりでしょうが、「一夜漬け」で覚えた知識など頭の中からすぐに消え去ってしまうでしょう。「週例テスト」に追われる子どもたちだって同様です。ですから、普段の単元別の「週例テスト」では比較的良い成績を残すものの、より範囲の広い「総合テスト」になるとさっぱり得点できない……こんな状況にわが子が陥ってしまっているなら、それは危険です。

だって、中学入試問題は中学受験の学習範囲全般から出題される「総合テスト」なのですから。

自宅で勉強する女の子
写真=iStock.com/Hakase_
※写真はイメージです

「指示待ち」になる子どもたち

塾通いを始めたばかりのわが子。当然、保護者のきめ細やかなフォロー体制を構築する必要があります。

わたしは自身の経営する中学受験専門塾の説明会で次のような話をしています。

「特に小学校三年生、四年生のお子さんが塾に初めて通うならば、最初は保護者の手厚いフォローが必要です。宿題はどこが出されているのかは毎回確認してください。また、週間のスケジュールを作成して、何曜日の何時から何時はこの科目のこの教材に取り組むという決め事をして、それらをルーティン化してほしいのです。また、子が宿題をしているときは解答解説を保護者側で預かり、終えたあとに、それを取り出して一緒に丸付けをしてやってください。わが子が理解できなかった点を簡単にアドバイスしてくださるとこちらとしても助かります。保護者がすぐに答えられないような質問が出たときは、すぐに塾にご連絡ください。授業前にこちらでその質問に対応します」

「家庭の進学塾化」と「親の塾講師化」は問題点がある一方、塾に通い始めたばかりは、どうしても保護者の対応に頼らざるを得ないというのが正直なところです。ただし、わたしは先の弁にこんな話を継いでいます。

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「しかし、子が塾通いに慣れるに従って、それまで保護者がフォローしていた事柄について時間をかけながら少しずつ手渡してやってください。たとえば、塾通いから半年経った夏からは親がやっていた丸付けを自力でさせましょう。そして、秋からは分からない問題は親でなく塾の講師に直接尋ねるようにさせましょう。冬になったら、これまで預かっていた解答解説を子に託し、宿題が終わったら自分で確認して復習させましょう……」

保護者の「期間限定サポート」のわが子へのバトンタッチはとても大切です。しかし、いつまでも保護者がわが子を信用できず、その学習管理から離れられないと、その結果、わが子は自分でいつどうやって行動したらよいか分からない……そんな「指示待ち人間」になってしまう危険性があるのです。

希学園首都圏の学園長・山﨑信之亮先生はこう釘を刺します。

「昔の保護者は、『うちの子、塾でがんばっています』と声を大にして言える人ばかりだったのですが、この四~五年、わが子を信じられない保護者が増えてきたように感じます。目に見える偏差値などの数値でしかものを考えられない保護者が増えているのではないでしょうか。わたしが大切だと思うのは、親が『見えないものを信じられるか」ということです。塾で学んでいるわが子、入試会場で試験に取り組むわが子。その姿が信じられないから、わが子を自身でコントロールする、支配下に置こうとしている。そして、『伴走』という表現でそれを正当化しようとしているように思えます」