※本稿は、リチャード・カールソン、小沢瑞穂訳『新版 小さいことにくよくよするな!』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。
ストレスに強い人ほど、実はストレスが多い
私たちの社会は逆行しているのではないか。私たちは大きなストレスにさらされた人、ストレスの重圧に耐えている人、ものすごいプレッシャーに耐えている人たちをえらいと思いがちだ。
「めちゃくちゃに仕事をしている」とか「ストレスがたまって」とか言う人をえらいと思い、その行動をまねさえする。私はストレス・コンサルタントをしているので、「ストレスにたいしてとても強いんです」と自慢する声を毎日のように聞く。このストレスまみれの人たちは私のオフィスに入ってきたとたん、もっとストレスに強くなるにはどうすればいいのかと聞くのだ。
幸いにも、私たちの情緒の領域には、次のような侵しがたい法則がある――つまり、現在のストレスのレベルは私たちのストレスの耐性に見合っている、というものだ。「私はストレスに強い」と言う人たちは、たえず大きなストレスにさらされることになる。だから、ストレスに強くなることを教えたとすれば、その人のストレスはもっと強くなるのだ。
彼らはストレスの耐性が伸びたぶんだけ、さらに多くの問題と責任を背負っていくことになる。ストレスに強いと豪語する人たちが自分の狂気に目覚めるには、なんらかの一大事がきっかけになることが多い――妻の家出や体の不調といった深刻な事態になってはじめて、新しいストレス対処法を探しはじめるのだ。
「早くやらなきゃ」という気持ちを抑え、まず散歩に出る
奇妙に思われるかもしれないが、一般のストレス管理セミナーで第一に教えるのはストレスの耐性を上げる方法だ。ストレス・コンサルタントでさえストレスまみれになっているらしい!
まず最初にすることは、手遅れになる前に早めに自分のストレスに気づくこと。頭が先へ先へとはたらきすぎるときは、ちょっと引いて態勢をととのえよう。
スケジュールに追いつかないときは、なにもかもやっつけようとするのではなく、速度を落として優先順位を見直すことだ。
もう手に負えない、こんなに仕事があるのか、と腹がたったら、腕まくりして取りかからずに深呼吸したり、短い散歩に出たりしてリラックスするにかぎる。
ストレスがたまっていることに早く気がつけば、そのストレスは丘を転がる雪玉のようなもので、まだコントロールできる。雪玉が小さいうちはなんとかなるのだ。しかし、気づくのが遅くて雪玉が勢いづいて転がり出してしまうと、もう手がつけられない。
すべてをやり終えられなかったらどうしよう、と悩むことはない。頭がはっきりして穏やかになれば、ストレスも少なく、能率も上がり、もっと楽しく仕事ができる。
ストレスの耐性を下げると、ストレス自体も減るだけではなく、残ったストレスを解消する独創的なアイデアもわいてくる。