※本稿は、シンシアリー『韓国の絶望 日本の希望』(扶桑社新書)の一部を再編集したものです。
対立の根を深める「嫌悪(ヒョモ)」
韓国の出生率が急激に低下している。ただ、この事実だけでは、韓国で起こっている「憤怒」が「分断」を呼び「絶望」へと至る悲劇に即座にはつながりません。たしかに、過度な社会問題が社会的分断の現れの一つだと見ることは十分に可能です。しかし、ここで私が提示したいのは、「憤怒が分断になる、分かりやすい具体例としての合計出生率」です。
その点、実は韓国で合計出生率が急降下している背景として、もう一つ、メディアがあまり取り上げない要因を指摘する必要があるでしょう。そう、韓国のネット世論を知っている人なら誰もが認めながらも、あまり表向きにはしない話、したくない話、いつまでも「ネットの一角で一部の人たちがやっているだけのこと」にとどめておきたい話。これぞ自分および自分が所属する集団以外を悪とする“悪魔化”の一つである「異性嫌悪」についてです。男が女を、女が男を敵視し、嫌悪(ヒョモ)する現象のことです。
嫌悪(ヒョモ)は、一時は「○○嫌悪」として、かなり流行った言葉ですが、最近はあまり目立たなくなりました。十数年以上も同じテーマでブログを毎日(サボる日も多いですが)更新しているので分かりますが、数年前までは、異性だけでなくいくつかの分野で、「葛藤」の強化版としてよく記事に載っていました。
「親ガチャ」に通じる「スプーン階級論」
たとえば、韓国では若い世代が前の世代を敵視する風潮が強くなっています。また、日本にも親ガチャという言葉がありますが、韓国ではすでに10年以上前から「スプーン階級論」など、なにがしかの階級付けが流行りました。
主に財産、年収などで人をランク付けするもので、一見、社会的な貧富の格差を皮肉るもののように見えますし、たしかにそんな側面もあります。ですが、実際は単に大金持ちの子で生まれなかったことを嘆くだけの内容です。
スプーン階級論における、「銀のスプーンをくわえて生まれた」とは、貴族など豊かな家に生まれたという意味です。身分の低い乳母が貴族の赤ちゃんに直接授乳することは許されず、いったん銀のスプーンに乳を出して、それを赤ちゃんに飲ませていたので、こんな表現が生まれました。