2023年下半期(7月~12月)、プレジデントオンラインで反響の大きかった記事ベスト5をお届けします。家計・節約部門の第5位は――。(初公開日:2023年7月27日)
定年を迎え60歳以降に働く場合には大幅に収入がダウンすることが少なくない。Money&You代表でマネーコンサルタントの頼藤太希さんは「給与を増やすのは簡単ではないが、公的な手当や給付金をもれなく手続きすることで手取り収入は増やすことができる」という――。
モダンなインテリア、Appleガジェットが机に並べられた空間で、裕福なシニアカップルが電卓を使用している
写真=iStock.com/erikapellini
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定年後の再雇用・再就職で収入が減る現実

定年後に再雇用・再就職する人はたくさんいます。しかし、定年後も収入を維持できる人はほんのひと握りなのが現実です。ただ、定年前後の手続きひとつで、収入減をカバーすることができるかもしれません。

今回は、定年前後の手取り額に大きく関わる「定年前後にトクする手続き」を紹介します。

定年後の働き方には、

再雇用……同じ会社で再び雇用されて働く
再就職……別の会社に就職して働く
業務委託……会社に属せず、仕事を請け負って働く
個人事業主・起業……新しい事業を始めて働く

という選択肢があります。

このうち、もっとも多いのは再雇用・再就職。つまり、会社に属して働くことです。

しかし、再雇用・再就職の多くは非正規社員です。60代になると、非正規社員の割合が急増します。

【図表】非正規社員の年齢別割合
出所=厚生労働省「高齢社会白書(令和5年版)」より

加えて、60代以降は給与が大きく下がります。パーソル総合研究所「シニア人材の就業実態や就業意識に関する調査」によると、定年後再雇用された人の約9割が「年収が下がった」と回答。年収の「減額率」の平均は44.3%で、「50%より下がった」という方も27.6%います。金額の多少は人ぞれぞれですが、定年後は再雇用・再就職するとしても収入が減ることは避けにくそうです。

しかし、定年前後の手続きの仕方によっては、支払う税金や社会保険料を減らしたり、手当や給付金をもらったりすることができます。

税金や社会保険料を減らし退職金の手取りを最大化

退職金の金額は年々減少傾向にあります。そのなかで退職金の金額を増やすことは難しいでしょう。しかし、退職金にかかる税金や社会保険料を減らし、退職金の手取り金額を最大化することはできます。

退職金の受け取り方には、一括で受け取る「一時金」、分割で受け取る「年金」、一部を一時金、残りを年金で受け取る「一時金&年金」があります。このうち、退職金の手取り金額を最大化できるのは「一時金」です。

会社での給与や賞与は「給与所得」という所得ですが、一時金で受け取る退職金は「退職所得」という所得になります。退職所得は分離課税といって、他の所得とは区別して課税されます。退職所得は、「(退職一時金-退職所得控除)×2分の1」という式で計算します。

退職所得控除は、退職金を一時金で受け取るときに利用できる控除です。退職所得控除の金額は、勤続年数によって計算します。退職所得控除の計算式は、勤続年数が20年以下、または20年超かで変わります。

【図表】退職所得控除の計算式
出所=国税庁