「背筋をピンと伸ばす」のは良い姿勢からは程遠い
子どもの頃、「背筋をピンと伸ばしなさい!」なんて言われたらどうしていたか覚えていますか?
きっと頭の中の「ハイ!」なんて掛け声とともに、背骨を真っ直ぐにするつもりで、頭が後ろにそっくり返るほど体を突き上げていたんじゃないでしょうか。
でも、突き上げられ、そっくり返った頭は重いですから、支える首はカチカチにかたまってしまいます。それでは美しさともリラックスともほど遠い体になってしまっていますね。
背骨が頭の下に降りながら、ゆらいでいるとイメージしてみてください。
こわばりがあってゆらぎが感じられませんか? それなら、背骨は鎖のように一つ一つが独立した動きをする連続体だと思い、ちょっとだけ時間をかけてその動きに身を委ねてみましょう。
背骨にゆらぎがあれば、リラックスしたまま背筋を立てていられるようになります。それは子どもの頃に「背筋をピンと伸ばしなさい!」と言われたときのカチコチの体とずいぶん違うはずです。そんな「以前とは違う」ことに気づくことが、今までの習慣を変えていく有効な手立てになるのです。
人間の胴体は思っている以上に「広くて長い」
また、胸を張って姿勢をよくすると、堂々としているように見えます。キレイな姿勢だという印象を与えることも、できるかもしれません。
でも後ろ姿を見てみると……背中がギュッと詰まっています! これもキレイな姿勢だと言う人もいるかもしれません。しかし、体がラクで快適か、という点ではどうでしょうか。
背中の筋肉は、他の筋肉と比べて大きくて強力です。それが緊張していると、常によけいな労力を割いていることになります。背中に偏った張りは、姿勢バランスに必要な「背骨のゆらぎ」を押さえつけて、閉じ込めてしまいます。
姿勢バランスを微調整しているのは、内側の細かい筋肉(インナーマッスル)です。これがきちんと仕事をするには、背中をギュッとしている大きな筋肉(アウターマッスル)の活動は、かえって邪魔になるのです。
図表3のように、胴体の前も後ろも「広くて長い」とイメージしてみましょう。背骨が自由に動けるスペースが生まれ、押しつぶしもよけいな労力もないまま、背筋もスッとキレイにしていられるようになります。