鏡の中にいる自分の姿勢が、老人のようだった
Dさんは、正社員で働きながら二人の子育てに奮闘し、毎日くたくたになる日々が続いていました。やがて体中がこりで痛くなり、吐き気や頭痛まで出るようになってきました。マッサージや整体などの施術を受けても、またすぐに不調がぶり返す……その繰り返しでした。
そんなDさんにとって、転機になったのは、ほんの日常のひとコマでした。ふと目に止まった鏡の中の自分が、老人のような姿勢をしていたのです。思い返してみると、Dさんは子どもの頃から、親に「姿勢が悪い」と叱られていたのですが、うまく姿勢をよくできず、あきらめていました。いままで目を背けていた「姿勢」こそが、この不調と疲労感の原因なのでは、と直感したのです。
Dさんにとって姿勢は、シャキッとしてつくった短時間だけの「よい姿勢」か、それをやめたときのグニャッとした姿勢の、どちらかでした。シャキッとすると、胴体の前側は広く立派にみえるのですが、背中側は緊張で縮んでしまいます。まるで自分で自分を磔にしているようで、これだと動きにくいし疲れやすいのです。反対に、気を抜いてグニャッとした猫背になるときは、腕をだらんとしていて、腕の重みが体全体を押しつぶしていることでした。
腕は片方約3キロ、牛乳パック3本ずつの重さです。それが両方から背骨を押しつぶすので、背中はカチカチになってしまいます。
背骨の最重要パーツは背中ではなく体の中心にある
「背骨がどこにあるか?」と聞かれたとき、あなたはきっと背中の骨の隆起を思い浮かべるのではないでしょうか?
確かに、それは背骨の一部です。
ところが、背骨の中でも肝心の支えを担っている中心部「椎体」は、図表1のように、びっくりするくらい中心近くにあるのです!
多くの方は、背骨が支えてくれている場所を背中側だと思い込んでいます。
そのため、「姿勢を真っ直ぐにしよう!」と思うと、背中側の筋肉をカチカチにかためてしまう傾向があります。つられて肩も腰も首もこりかたまっていく……という、あまりよくない習慣を持つようになってしまいます。
残念ながら、背中には背骨の支えはないのです。
あなたの重さを支えてくれる大黒柱は、体の中心にあって、お腹からも背中からも深い位置にある「椎体」です。
本当の支えの位置を知れば、むやみに背中をかためることもありません。
背中がゆるんでも姿勢は崩れることがないとわかり、安心してゆったりとした体になることができるのです。