デスクワークの腰痛予防にも「坐骨ゆらゆら」

Cさんは、1日8時間のデスクワークによる腰痛で、整形外科にかかっていました。しかし湿布やマッサージをしても、腰痛は改善しませんでした。ふだんの座り姿勢や生活スタイルのことをお聞きし、筋肉の緊張を調べさせてもらいました。

すると、股関節の代わりに骨盤が胴体を押しつぶして座り、パソコン画面に向かっていたことや、そのうつむき姿勢が仕事以外の時間もその傾向でいることがわかりました。そこで私はCさんに、座りながら骨盤がゆれるところをお見せしました。坐骨でバランスをとると、デスクワーク中も体がかたまらないのです。

私たちの体には、筋肉さえジャマしなければ止まぬ動きがあります。代表的なものは「呼吸」、そしてバランスをとっているために起こる「ゆらぎ」です。

座面に接している骨は、お尻の下にある坐骨です。坐骨の接地面はカーブしていて、ゆりかごのようにゆれ続けるのに最適です。体をつぶしていると、坐骨のカーブは押されて寝たままになってしまいます。

疲れたときこそ、背骨の上に頭を乗せ、スッと背筋を立ち上げて骨盤をゆりかごのようにゆらしてみてください。呼吸と波とバランスのゆらぎがよみがえり、体がゆるんでいくのが感じられるでしょう。

自律神経の乱れと筋肉の緊張が悪循環になってしまい、それこそ何十年も「快適な体」を経験しなかった方もいらっしゃいます。Cさんもその一人で、実際に試してみて心底驚いているようでした。

ひざを立て、ゆるやかに呼吸をする…背骨から休む「セミスパイン」

Cさんからは、不眠で悩んでいることも聞いていました。うつ病の診断もされており、抗うつ剤と睡眠導入剤を飲んでいるとのことでした。そこで、私はCさんにリラックスしてスッと眠りにつく、とっておきの方法を教えました。

それは背骨を横たえる、「セミスパイン」という方法です。首を自由にしたまま体の動きを観察し、筋肉の緊張を取り除いて調子を整えていく、というものです。まず仰向けになり、両ひざを立てて足の力を抜き、両手を脇腹に乗せます。頭の下に折りたたんだタオルなどを敷くと、首がラクになるかもしれません。そして以下の3つを順番にイメージします。

(1)体と床が接しているところを感じます(30秒)
(2)息を吸っているか、吐いているかに気づきます(30秒)
(3)背骨が頭側にもお尻(尾骨)側にも伸びていくと思います(30秒)

これは私が知る限りで最も手軽で効果のある休息方法で、瞑想のようでありながらも、瞑想ほど時間を必要としません。そのまま眠るのなら、(3)が終わったら足を伸ばせばいいのです。呼吸のゆるやかで心地よいリズムが繰り返され、しだいに眠りに落ちていくことでしょう。

近年は、うつ病に対して、薬やカウンセリング以外のアプローチも盛んになってきました。運動や瞑想が有効なのは、データからも明らかです。しかし、うつ病特有の「意欲減退」が障壁になって、継続していくのが難しく、一時的な改善にとどまるケースは後を絶ちません。

それより私がお勧めするのは、まずは体の認識を変えること。今すぐできて、難しくないし、副作用もありません。ぜひトライしてみてください。

【関連記事】
【第1回】高血圧に悩む60代女性は首が「頭の重さ」でつぶれていた…全身の血流を妨げる"バキバキ首"の解消法
「10万人の胃腸を診た専門医が警鐘」日本人の約5割が毎朝食べている胃腸に最悪の"ある食べ物"
「あんなことを言われて納得いかない」理不尽な言動を受けた夜でもぐっすり眠れる6文字の魔法の言葉
朝起きられず、ひどいときは気を失う…中高生の1割が発症するのに理解されない「起立性調節障害」のつらさ
日本のワンオペ育児は外国では「7人分」の仕事量…毎日育児や家事でクタクタになる根本原因