腰痛がなくなり気持ちに余裕ができると人間関係が改善した
この2つを確認しながら、「しゃがむときに一番深く曲がるのは股関節です。股関節が一番曲がると思いながら、しゃがんでみてください」とBさんにお伝えしました。するとふだんより簡単にしゃがみ動作を繰り返すことができ、いつもの腰痛が起こらないのでビックリされていました。
ただ「知る」だけで、それがきっかけとなって、体の動かし方や姿勢、そして腰痛までも改善してしまったのです。
そしてその変化は、他のスタッフとのコミュニケーションにも及んできました。腰痛がないと、気持ちに余裕が生まれ、物腰まで穏やかになっていったそうです。Bさんは、介護現場では管理職でした。振り返ってみると、現場をよりよくしようとするあまり、目ざとく人の仕事のアラを見つけてはイライラしたり、若手スタッフに威圧的になっていたそうです。
私はBさんに最初お会いしたときの、お顔の鋭い印象を覚えています。それがお会いするたびに、温厚な表情に変わっていきました。腰痛ほど自覚的ではなかったにせよ、人間関係でも苦労があり、お悩みだったのだと思います。
急に心を入れ替えて、穏やかな態度で人と接するのは、頭で考えるよりずっと難しいものです。メンタルの問題を思考で解決しようとしても、すぐに限界がきてしまいます。人は自分にウソをついてごまかしても、一方で本当の気持ちを自覚してしまうので、心がけで自分を変えるのは難しいのです。
一方、体のイメージを書き換えるのは、とても簡単です。すぐに体に反映できて、見てわかる結果が表れます。アンガーマネジメントを行う前に、まずは体から見直していくことを、おすすめします。
うつ病の人の体はやわらかそうに見えてかたい
うつ病は有病率6%と言われ、日本人の16人に一人が生涯で経験するという、ごくありふれた病気です。そして、うつ病の人の実に77〜90%が不眠症を併発しています。
私は、うつ病の方で、体の快適な人に出会ったことがありません。特に、不眠症を伴ったうつ病の方の体は虚脱している――一見やわらかいように見えるのですが、実はかたまっている、という場合がほとんどです。
体のバランスが崩れているため、筋肉の緊張は強くなり、肩こりや腰の張り、呼吸の浅さ、息苦しさを伴って、体が重く動きにくくなります。頭痛やめまいに加えて、吐き気、食欲低下、便秘など消化器官の問題も多く見られます。
そのような緊張状態では、自律神経が乱れて、不眠になってしまうのも当然といえるでしょう。しかし裏を返せば、筋肉の緊張を解き、体のバランスを取り戻しさえすれば、うつ病や不眠が改善する可能性もあるということです。