※本稿は、今西康次『朝、起きられない病』(光文社新書)の一部を再編集したものです。
全国の中高生で起立性調節障害があるのは約70万人
2016年に日本小児科学会がまとめた資料によれば、軽症例も含めると、中高生の約10%に起立性調節障害が見られているとされています。全国の中高生の各学年に約12万人、中高生全体では約70万人いると推定されています。
軽症例では日常生活にあまり支障はないものの、「欠席を繰り返して不登校状態に陥る重症例は約1%」といわれています。実際に、起立性調節障害による不登校は、全国で約7万人と推定されています。
1999年の調査では、10代前半の子どもの約8%と見られていた起立性調節障害は、年々増加しており、現在では10%程度といわれています。
増加の原因ははっきり分かっておらず、さらに困ったことに、小児期に発症した起立性調節障害の約40%は、成人以降にも症状が続くという報告もあります。
岡山県教育委員会の「起立性調節障害対応ガイドライン」によると、小学生で約5%、中学生で約10%、重症例は小中学生全体の約1%。女子は男子より2割ほど多く、小学校高学年から増え始め、中学生で急増する傾向があります。初潮や身長の伸びのスパートなど二次性徴の頃に発症することが多いようです。近年、起立性調節障害と診断される子どもは増えており、現代の夜型社会、運動不足、複雑化した社会における心理社会的ストレスが背景にあるとしています。
自律神経の働きが狂うと起立性調節障害になってしまう
起立性調節障害は自律神経機能の働きの調子が悪いため、起床後に立ち上がった際、体全体や脳への血流が低下することから不調が起こるといわれています。
自律神経には、「交感神経」と「副交感神経」があり、心身の調子はこの2つの神経の絶妙なバランスの上に成り立っています。交感神経は心拍数や血圧を上げたり、瞳孔を開いて注視したりと、活発な行動をするための神経です。もう一方の副交感神経は、リラックスし、体の調子を整えたりする働きがあります。