スランプに陥った作家は他人の文章を書き写している
模倣に罪悪感を持つ人もいる。模倣は盗みだという考えもある。たしかに特定の種類の盗用は法で制限されているし、そうあるべきだ。
だが創造は模倣を伴うことが多い。また人は模倣するとき、過去の成功事例の最も重要な要素を抽出するために、それを戦略的に再現することもある。
たとえばスティーブン・キング(と息子のジョー・ヒル)などの高名な作家も、書けないスランプに陥ると、ほかの作家の文章を書き写している。多くの作家がひらめきを得るために――そして1文字も書けないまま白紙のページとにらめっこするという、作家が最も恐れる事態を避けるために――いつもと違う文体やリズムで書いてみる。
部分的模倣を理解しないことは、イノベーションの妨げになる。あなたもこんな経験がないだろうか? 上司に「Y社のAの技術を取り入れましょう」と進言すると、「うちはY社とは違う」とか、「前にAを試したがうまくいかなかった」などとはねつけられる。だが後者の場合はもしかすると、Y社のAとBとCを試した、つまり模倣しすぎて、Aだけを試したことはないのかもしれない。
「丸パクリかまねしないか」の両極端で考えてはいけない
成功事例を分解して必要な部分だけを抽出するのは、とても難しいスキルだが、何度もくり返し訓練するうちに身につけることができる。
私たちは成功事例を見ると、すべてを模倣するか、まったく模倣しないかの両極端になることが多い。だがあなたが本当にほしいのは、成功の決め手となった特定の戦術、核心部分だ。課題を解決するためには、成功事例全体ではなく、成功した戦術を模倣しよう。
実際、私が教えるThink Biggerの学生プロジェクトから得たデータによれば、戦略的模倣を重視する学生が生み出した解決策は、業界のリーダーや同級生によって、より新規かつ有用と評価されることが多いのだ。